「2021名古屋市長選・河村市政12年の検証」第3回 興味は「マスコミ受けする政策」だけ? 職員まかせの重要課題
「緑被率」下げ止まらず、市長の関心も薄れる
環境への取り組みも本来、自治体にとって重要な課題だ。 環境政策では「緑被率」の指標がある。市の全体面積に対する緑地や水面の割合だ。市は5年ごとに緑被率を公表しており、1990年に29.8%だった数値は95年に27.4%、2000年には25.3%へと減少。この時点で、当初2020年には確保するとしていた目標値の27%をあっさり割り込んでしまっていた。 河村市長は09年の就任当初、市内の里山保全に熱心に取り組んでいた。しかし緑被率は下げ止まらず、10年に23.3%、15年22.0%、そして先月公表された最新の20年調査では21.5%となった。 緑被率の低下は景観の問題だけでなく、都市部ではヒートアイランド現象による気温上昇の要因と見られている。昨今は名古屋のヒートアイランド化を分析した『暑さで人の死ぬ時代 いま、名古屋があぶない』(風媒社)というショッキングなタイトルの本も出版されるほどで、まさしく住民の「命」に関わる重要な問題である。 しかし、河村市長の公約からは以前まであった「水」や「緑」の文字がすっかり影を潜めてしまっている。 今回、いったんは立候補を表明し、今月7日に撤退した市民団体役員の尾形慶子氏は、温暖化対策などの環境政策を前面に打ち出していた。もう一人の市民系候補である元会社員の太田敏光氏は、市内の里山保全活動に関わり、今回も道路計画の廃止などを訴えている。 有力対抗馬とされる元市議会議長の横井利明氏は市南部が地盤。「伊勢湾台風で被害を受けた地域が地元で、防災・災害対策には人一倍思い入れがある」として防災・危機管理部門を市長直轄にしたり、木造住宅密集地の道路整備促進を条例化したりする公約を示す。環境面では温暖化対策の他、市内中心部を流れる堀川の浄化施策を強調している。 しかし、それらが河村市長を交えた討論会などの場で、かみ合った議論になる機会はほとんどない。