心筋梗塞に腕の切断…糖尿病患者が語る“合併症”の本当の怖さ【堀江貴文】
堀江 改めて糖尿病のメカニズムをお伝えすると、血糖値が上がると膵臓のβ細胞がインスリンをドバドバ製造して血中に流します。すると、血中の糖質を身体の細胞がせっせと取りこむので血糖値が下がるわけです。糖質が過剰だと、ある程度は身体の活動エネルギーとして使われますが、余った糖質は脂肪に変換されて貯蔵されます。それで太る。けれど、糖尿病になると高血糖が続くため膵臓が疲弊してβ細胞も数が減り、インスリンを作る能力が低下します。だから糖質を細胞が取りこめず、尿中に排出されるために身体は痩せていくんです。 義太夫 確かに、普通に食べて運動もしていないのに、気づいたら20㎏くらい痩せてました。 佐野 僕も体重が減っていくのはいいことだと思っていました。 渥美 インスリンは脂肪を貯蔵=太るために出す膵臓のホルモン。だから、高血糖でかつ痩せてくるのは、糖尿病のとても危険なサインです。大事なのは定期的な通院。些細な変化を見逃さないことです。 佐野 怖いのが、抵抗力がどんどん低下するので、合併症の進行が速いこと。僕の腕が切断にいたったのも、指先の小さな傷が始まり。以前より治りが悪いと心配になってから2週間経たないうちに、傷の感染が広がってしまった。だから今でも小さな傷ができると不安になります。糖尿病になると、傷は治りにくいです。指先の傷は半年以上経ってもカサブタのままでした。 渥美 糖尿病は血流が悪くなるので、新しい細胞を作る材料も栄養も、傷を治す白血球もたどりつかないんです。そのため治りにくくなるし、感染にも弱い。血栓もできやすく、脳梗塞や心筋梗塞、目の網膜出血や腎症の合併症が起きやすい。とはいえ、おふたりが糖尿病を発症したのは20~30年前。今は低血糖になりにくい薬もありますし、適切な血糖管理で日常生活を続けることが可能です。佐野さんがつけている血糖値計測のデバイスも便利ですよね。 佐野 はい。針を刺す自己採血も不要ですし、アプリがあって、毎分スマホに数値データが勝手に送られてくるんですよ。 堀江 今の血糖値は? 佐野 高い時で140くらい。あとは、ほぼ100前後で安定しています。 堀江 おふたりは糖尿病の怖さを身をもって体験し、話してくれました。皆さんも他の方に伝えて、より多くの方の予防に活かしてもらいたいです。 渥美義大 糖尿病専門医。糖尿病、医学教育などに関心を持ち、通院継続しやすい医療の実現を目指す。映画『糖尿病の不都合な真実』プロデューサー。 グレート義太夫 透析治療を行うお笑いタレント。糖尿病性腎症により透析治療を行う。著書『糖尿だよ、おっ母さん!』では糖尿病の発症から透析にいたるまでを綴っている。 佐野慈紀 糖尿病で右腕を切断した元プロ野球選手。1990年からプロ野球選手として活躍。引退後は、野球解説者・評論家として活動。2024年に糖尿病の合併症により右腕切断を経験。 堀江貴文/Takafumi Horie 1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。著書も多数。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』が好評発売中。