まさに漢字の「山」そのもの!「日光白根山」で、湖沼、湿原の絶景も楽しむ欲張り登山を
高度が上がると岩場が交じり、かつての火山活動の激しさを感じさせる地形が広がる。火山特有の荒涼としたガレ場(石や岩で埋め尽くされた斜面)のところどころに雪が混じり、青い空と白い雪のコントラストが美しい。景色を楽しみながら、一歩一歩上を目指す。左手に奥白根神社の祠(ほこら)が見えてくれば、もう少しで山頂だ。
標高2578メートルの山頂から見下ろす眺めは抜群で、男体山、女峰山を筆頭とする日光連山や中禅寺湖など、360度の大展望が楽しめる。足元には、深い緑に包まれた野生林が広がり、刻々と色が変化する五色沼のコバルトブルーの水面が輝く。日本の自然美を凝縮したかのような光景だ。壮大な景色を眺めながら食べるおむすびは、まさに格別の味!
山頂から足を延ばして五色沼と弥陀ヶ池をめぐれば、さらに変化に富んだ景色に出合える。五色沼までは砂礫が多く急な下りが続くため、足元に注意して進む。1時間ほど歩くと、五色沼のほとりに到着。浅瀬では水草や小魚がはっきりと見えるほど透明度が高い。水中に沈む木の枝や石が、鮮やかな青や緑に照らされ、まるで別世界に迷い込んだかのような神秘的な雰囲気。さらに30分ほど歩くと弥陀ヶ池がある。静謐(せいひつ)な水面を眺めるうちに、心が穏やかになっていくのを感じた。ただし、ロープウェイの下り最終便は16時30分と早め。乗り遅れたら大変と、美しい景観に別れを告げて下山する。 日光連山に囲まれたこの一帯は、いくつもの湿原や草原、湖や滝があり、変化に富んだ地形が特徴。その一部は、国際的に重要な湿地「奥日光の湿原」としてラムサール条約湿地に登録されている。また、多くの湿原植物や高山植物が分布し、ツキノワグマやニホンジカなどの野生動物が生息、180種以上の野鳥が確認されたという記録が残る。山岳、湖沼、滝、湿原がおりなす、多彩な自然美を有する自然遺産。次回は高山植物が咲き誇る春に訪れてみたい。 photo&text:鈴木博美