「質量」と「重さ」は同じではないの...?「詰まっている物の量」で考えたら、じつにシンプルだった「納得の意味」
グラムやキログラムは「重さの単位」ではない!
「質量」の代わりに「重さ」が使われている最も大きな理由は「単位」にあります。 日本中どこに行っても、ものを量る際の「重さの単位」には「グラム(g)」や「キログラム(kg)」が使われていますね。スーパーなどで食品を買うときにはたいてい、「100gあたりの値段」や「1kgあたりの値段」が示されています。このように、日常に馴染んだ単位が使われていることが、「重さ」に具体性を感じることができるいちばんの理由でしょう。 ところが、グラムやキログラムは、じつは「重さの単位」ではないのです! グラムやキログラムは本来、「質量の単位」なのです。いったいどういうことでしょうか。 まず、「物質」と「物体」は必ずしも同じではない、というところから始めましょう。物体は、さまざまに異なった材料(あるいは材質)から構成されています。 たとえば、鉛筆という物体は、グラファイト(結晶状の炭素)という材質と木から構成されています(ときにはさらに消しゴムが加わることも)。時計も、通常はある一種の金属だけで構成されてはいませんから、やはり物体です。多数の部品からなるスマホやパソコンは言わずもがなです。加えて、物体には、さまざまな「形」や「大きさ」もあります。 一方、「物質」を考える際には、「どんな材料あるいは材質でできているのか」だけが重要であり、形や大きさは問題にしません。そして、「同じ材料」からできているものどうしを「同じ物質」ととらえます。 「同じ物質」を構成する「同じ材料」とは、「同じ分子」や「同じ原子」のことです。たとえば、純粋な金属は「同じ原子」からできているので「物質」です。 そして、物質と物体に共通する性質として、両者はともに「質量」をもっています。それでは、質量とはいったい何なのでしょうか?
質量とはなんだろう
「質量」の説明は決してやさしくありません! 空港の到着ロビー付近にある手荷物受取所(バゲージクレーム)を例に考えてみましょう。バゲージクレームでは、乗客の荷物がベルトコンベアに乗ってぐるぐると回転しています。 偶然にも、まったく同じ二つの「キャリーバッグ」が出てきたとしましょう。メーカーはもちろん、大きさも色も形もまったく同じで、ネームタグもついておらず、見た目だけでは区別のつけようがありません。 便宜上、一方のバッグを「荷物A」、もう一方を「荷物B」とよぶことにします。外見上はまったく同じ荷物Aと荷物Bを見分けるにはどうすればいいでしょうか? 明確に区別できる方法が、一つだけあります──「重さ」です。いくら外見がまったく同じでも、重さまでまったく同じである確率はきわめて小さく、ほとんどゼロと考えられます。実際に手にもってみて、荷物Aのほうが荷物Bよりも重かったとしましょう。ここで質問です。 どうして荷物Aのほうが荷物Bよりも重いのでしょうか? 決して“愚問”ではありませんよ。物理的に、とても重要なことがひそんでいるのです。 答えは、「荷物Aのほうが荷物Bよりも、“物”がいっぱい詰め込まれているから」(あるいは「荷物Aのほうが荷物Bよりも、“重い物”が詰め込まれているから」)。 荷物Aと荷物Bは、形も体積もまったく同じですが、前者のほうが後者よりも内容物の量が多い。だから、荷物Aのほうが荷物Bよりも重いのです。 なお、重さには関係なく、荷物Aにも荷物Bにもバッグの素材とは別の内容物が入っているとすると、荷物は「物体」です。 そして、この「荷物の量」が、物体としての荷物の「質量」に相当します。