「なけなしの貯金ですが…」自分が孤独死したあとの遺産は妹ではなく「推し」に託したい…指定難病におかされた52歳派遣社員男性のささやかな望み【行政書士の助言】
未婚男性に突然の難病宣告。財産相続先は?
康成さんが社会に出たのはバブル崩壊後。残念ながら、新卒で正社員として就職する先がなく、派遣社員として30年間、汗を流してきました。実際のところ、出世する可能性はなく、昇給する見込みもなく、2~3年で勤務先が変わる不安定な生活。「日々、生きているだけで精一杯でした」と振り返ります。 前述の出生動向基本調査によると独身男性のうち、37%は恋人として交際した経験がなく、44%は性交渉の経験がなく、92%は同棲の経験がありませんが、康成さんも同じくです。 この歳になっても、ほとんどお金は貯まらず、自分の貯金はコロナ禍で支給された定額給付金しかありませんでした。財産といえる財産は親から相続した遺産のみ。「実家の土地、建物を売ってもらった400万だけですよ」と自嘲気味に言います。 そんななか康成さんは急な下痢や腹痛に悩まされていました。そこで意を決し、病院に駆け込んだのですが、検査の結果、「クローン病」と診断されたそうです。これは大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症、潰瘍を引き起こす原因不明の疾患。厚生労働省は難病に指定しており、高度の狭窄や穿孔、膿瘍などの合併症を引き起こす可能性のある病です。男性と女性の比は、約2:1。男性がかかりやすい病気です。 筆者のホームページにはLINEのIDを掲載していますが、康成さんが筆者のLINEに友達申請をしてきたのは、そんなタイミングでした。筆者は「手遅れにならないよう、何かあった場合のことを考えなければなりませんよ」と励ましました。 一度も結婚したことのない康成さんに妻子はおらず、両親はすでに他界。妹とは15年来、音沙汰なし。このように誰一人として頼れる人がいないので、このまま孤独死した場合、400万少々の貯金を誰に託せば良いのでしょうか? 康成さんは「できれば『推し』にあげたいんですが…」と明かしました。思わず、筆者が「それは誰のことですか?」と尋ねると、康成さんは恥ずかしそうに語り始めました。