「トヨタ1強」時代の始まり 2016年クルマ業界振り返り
2016年を振り返って、世界の自動車産業にとって最大の変化は何だったかを考えると、年初のダイハツ完全子会社化から始まったトヨタの巨大アライアンス構築だろう。 【写真】“トヨタ帝国”に死角はないのか? ダイハツ完全子会社化の戦略を読み解く 2015年5月に突如マツダとの業務提携への基本合意を発表して以来、明くる2016年8月には前述のダイハツの完全子会社化を終え、すかさず10月にはスズキとの提携検討開始を発表した。アライアンスは、まだまだ詳細未定の部分が多いが、それでも、各社の社長が公式に記者会見を開いた意味は大きい。トヨタは自動車メーカーのハブになろうとしている。
1540万台のアライアンス
その規模は驚異的だ。極めて概算だが、トヨタ1000万台、スズキ300万台、マツダ140万台、スバル100万台を合計すると1540万台という途方もない数になる。 トヨタ以前の覇者であったGMは2000年時点で約850万台でダントツであり、2位のフォードが約700万台。後にポストGMを争うトヨタは約600万台、フォルクスワーゲンは約500万台に過ぎなかった。そこからたった16年で、当時3位だったトヨタは1位GMと2位フォードを合算した規模のアライアンスを作り上げたことになる。
そもそも去年の年末時点では、自動車産業のグローバルビューは、「トヨタ、フォルクスワーゲン、GMの1000万台を挟んだ三つ巴の首位争い」とするのが妥当な理解で、筆者のみならず、世界の誰も1年後に1強時代を迎えることは想像しなかったはずである。
恐ろしい変化のスピードだ。会社は人が経営しているので、こんなことは偶然起きない。誰かが計画し、検討し、実行に移して初めて事業は回る。常識的に考えれば、この1500万台越えのアライアンスを生み出したのはトヨタ自動車の豊田章男社長と考えるのが順当だろう。もちろん運や偶然は事業には付きもので、それがないとどんなに力業で押し切ろうとしても上手くは行かない。しかし、どうしたいというビジョンがなければ運も偶然も味方にはできない。 では豊田社長は、一体何のためにこんな大規模アライアンスを作り上げようとしているのだろうか? おそらく最も大きいのはコネクティッドカー時代の到来だろう。コネクティッドカーとはいわゆるモノのインターネット化(IoT)に準拠した車両間通信システムが搭載されたクルマである。まもなく発売される新型プリウスPHVから車両への搭載が始まる。