「トヨタ1強」時代の始まり 2016年クルマ業界振り返り
ビッグデータ戦争が始まる
車両のデータ通信によって可能になることは多い。一例を挙げれば、災害時の通行可能なルートの判定がある。車両が走行出来ているルートを車両間通信によって把握することによって、車両が通行可能なルートを特定できる。これは当然、渋滞回避や事故で道路が閉鎖された時などにも応用できるので、それだけでも意味は小さくないが、今後の計画を聞くと驚く様なことが沢山ある。 例えば、ある地域を走行しているクルマのワイパーが動いていれば、そこは降雨中と考えられる。車両に蓄積されたデータで急ブレーキなどの記録が多いドライバーが当該地域を通行しようとした時、運転に不慣れなドライバーだと判断して、降雨地域が局地的なものならナビが自動的に迂回ルートを案内するとか、どうしても降雨地域を走行しなくてはならない場合には、警告を表示するということができる。 しかし、トヨタにとって最も大きいのは、こうした車両間通信を経由して得られるビッグデータだ。現在の新型車には、すでに多くの運転支援システムが搭載されている。例えばぶつからないブレーキや、誤発進防止装置、レーンキープアシストと言った事故を未然に防ぐシステムだ。これらのシステムがどこでどんな時に作動したのかを分析することで、システムの作動条件をブラッシュアップすることも可能になるはずだ。 それが進んだ先には自動運転がある。トヨタでは自動運転のフェーズを「ガーディアン型」と「ショーファー型」に分けて考えている。ガーディアンとは「守護天使」を意味し、従来の運転支援システムを進化させたものだ。問題のない状況下ではハンドル、アクセル、ブレーキをクルマが操作し、クリティカルな状況ではドライバーを呼び出して運転の主導権を渡す。例えば細い路地のすれ違いや、複雑な交差点の通過などが考えられる。そうした場面では、ドライバーがクルマを操作する。車両間通信システムは、ガーディアン型システムがどこでギブアップし、それをドライバーがどう解決したかをデータ化してサーバーに送り出す。こうしたデータを大量に蓄積して分析すれば、自動運転は次のフェーズに進むことができる。 ショーファーとは「運転手」のことで、まさにお抱え運転手のように、全ての運転を任せることができる。そこに上述のビッグデータが活かされるわけだ。ガーディアン型でできなかったことが出来るようになるかどうかは、どれだけ早く、大量に、さまざまなケーススタディを積み上げられるかに掛かっており、ビッグデータの厚みが、そのままショーファー型自動運転の性能を左右することになる可能性が高い。もちろん、こんな芸当は小規模メーカーにはできない。だからこそ、マツダもスズキもアライアンスへの加盟を真剣に検討し始めたのだろう。