「トヨタ1強」時代の始まり 2016年クルマ業界振り返り
巨大リソースが必要な時代へ
さて、話は自動運転から離れる。次に大きな要因は環境対策だ。2018年から北米のゼロエミッションビークル(ZEV)規制が厳格化され、従来カリフォルニア州だけで施行されていたものが8州に増え、全米シェアの25%が対象となる。ZEV規制とは、一定規模以上のメーカーに対して、販売台数の内の一定割合でZEVを販売することを義務づけたものだ。今回の規制強化で、ハイブリッドはZEVと見なされないことになった。さらに販売台数に対する割合も年を追って強化されることになっている。 以下に数値を挙げる。ちなみにカッコ内の数字は左が「燃料電池車と電気自動車」右が「プラグインハイブリッド」だ。2018年の例で言えば、4.5%全てを燃料電池車または電気自動車でまかなっても良いが、仮にプラグインハイブリッドを4.5%売っても、2.5%までしか台数としてカウントされない。そういう仕組みである。 2018年 4.5%( 2.0%・2.5%) 2019年 7.0%( 4.0%・3.0%) 2020年 9.5%( 6.0%・3.5%) 2021年 12.0%( 8.0%・4.0%) 2022年 14.5%(10.0%・4.5%) 2023年 17.0%(12.0%・5.0%) 2024年 19.5%(14.0%・5.5%) 2025年 22.0%(16.0%・6.0%)
ちなみにこの規制台数を達成出来ない場合、他メーカーから台数枠を買うか、高額の罰金を科せられるかで、いずれにしても経営を圧迫する。トヨタの場合、これまでプリウスで稼いだ枠を販売することでむしろ儲けていた側だったのが、一転大きな痛手を被りかねない。 この規制によって具体的にどうなるかと言えば、例えば現在のトヨタのラインナップで考えた場合、北米で販売している284万台のうち、MIRAIを5.7万台、プリウスPHVを7.1万台販売しなくてはならない。プリウスPHVはもしかしたら可能かも知れないが、MIRAIの5.7万台はどう考えてもあり得ない。売る以前にインフラが未整備なのだ。しかも、規制は上の数字でまとめた通り、2025年までどんどん厳しさを増して行き、最終的には年間45万台のMIRAIを販売しなくてはならなくなる。正直な話、このZEV規制は正気の沙汰とは思えない。トヨタのみならず、ビッグ3を含めた世界中の自動車メーカーのどこもこの規制を守れないだろう。