受験対策と一線画す「異色の数学」で生徒に変化 「おもしろい授業をするのがいい先生」が原動力
ドルトン東京学園では「おもしろい授業をするのがいい先生」
金行氏は、「一般的には、“いかに教科書をわかりやすく解説するか”が教員に求められています。しかしドルトン東京学園では、授業中に教科書を開くことは珍しい。授業準備のときには教科書を開きますが、授業では自分で工夫した教材を使うことが多くなっています」と言った。さらに師岡氏が続ける。 「教科書は、授業が終わって生徒が開いてみたら知識がまとまっている冊子という存在だと思います。私は授業の最後に、『教科書ではこう説明しているよ』と示したりはしています。実際の授業は、目の前の生徒にあわせた教材を持ってきてやることのほうが多い」 そうなってくると、一般的な学校とドルトン東京学園では生徒による教員の評価も違うような気がする。それを質問すると八島氏が、「普通は、わかりやすく教えるのが『いい先生』といわれることが多い気がしますが、ドルトン東京学園では『おもしろい授業をするのがいい先生』なんです」と答えた。「おもしろおかしく」の「おもしろい」ではなく、興味をかきたてる、ワクワクさせるという意味の「おもしろい」だ。そういう授業なら、授業中に寝る生徒もいないはずである。 そうしたドルトン東京学園の数学について金行氏は、「探究心を持った生徒を育てていくことを数学科としては大事にしています」とまとめた。さらに、「探究をするうえでは基本的な力も必要ですから、そちらも充実させる取り組みも行っています」とも付け加えた。 暗記数学が主流になっている現状では、自分の頭で考えることを放棄してしまいがちなので、探究心を育てることにつながりにくい状態になっている。 それでは、学習指導要領の基本的な考え方で文科省が前提にしている「いまだかつてなかったような急速かつ激しい変化が進行する社会を一人一人の人間が主体的・創造的に生き抜いていく」ことはできない。ほかの学校でも、ドルトン東京学園で行われているようなワクワクする授業づくりが、もっと意識されていいのではないだろうか。 (注記のない写真:Flatpit / PIXTA)
執筆:フリージャーナリスト 前屋毅・東洋経済education × ICT編集部