米国では「ランニングホームラン」も「デッドボール」も意味不明 こんなにある和製英語の野球用語 カナダ出身阪神ファンが詳細解説
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。筆者は大学の英語講師の傍らでこのコラムを執筆してますが、間もなく本格的な受験シーズンに突入します。正月返上で英単語の暗記に励んでいる受験生も多いことでしょう。単語を覚えるのはいいことですが、それだけで英会話ができるかというとそうではない。また英語の上達というのは男女老若を問わず、ほぼ全員が望んでいるでしょう。皆さん、もっと英語を話せるようになりたいでしょ?なら野球を通して学習したらどうでしょうか? 最近は野球関係の英語学習本をよく目にします。やっぱりこれは大谷翔平効果ではないでしょうか。僕は個人的に2022年に出版されたパトリック・ハーラン氏の「パックンの最新野球英語講座 メジャー・リーグ中継を英語で味わってみよう!」という本が非常に面白いと思った。同著はMLB中継で聞ける英語の面白い表現を丁寧に説明してくれている。また、和製英語の野球用語もよく指摘している。 ということで皆さんにちょっとした英語講座を提供しようと思う。以下の文章では実際の英語表現を使うけど、どれも和訳すると“和製英語”になるものです。英語ネイティブの野球ファンは絶対に使わないし、理解できないはず。では、例文で練習しましょう。 「虎番記者が記事を書くために不可欠なのはlaptopです」 laptopを日本語(和製英語)にするとノートパソコンです。簡単すぎましたか?では本題!次からは野球用語だけでやってみましょう。 ①2024年には多くのnice playsがあったね。ひょっとして最も珍しかったのは広島・矢野雅哉選手のinside the park home runだったんじゃないかな。Bang-bang playにならずに余裕でセーフだったのに彼はslid headfirst。あれは実に我らの阪神・糸原健斗選手以来、2年ぶりだったらしい。糸原選手の場合はplay at the plateは間に合わず、捕手のtag outの試みは報われなかった。だけど捕手は走路に立ち、糸原選手は彼のshin guardsに当たった。メチャクチャexciting playだった。 ②もう一つの珍プレーは巨人・岡本和真選手のground rule doubleだった。彼はbatter’s eyeを狙ってただろうけどswing for the fencesの結果、打球が上がりすぎて天井の懸垂物に挟まってしまった。インフィールドフライのはずだがRBI doubleになって走者の門脇選手がscoreした。それも野球の醍醐味の一つですね。 ③“日本野球あるある”なのはbunting for a hit. 時には監督がslash buntに切り替えることもある。そういう時にhigh bounceのgrounderになることが多いが、時には内野と外野の間にポツンと落ちるblooperになることもある。投手もバントを要求されることが多い。2回失敗してもbunt with two strikesと強行されることになるし、check swingを止めることができない結果は三振だ。最高の結果はjerseyをかするhit by pitchで怪我をせずに出塁できるケースだね。 ④走塁もすごく面白いよね。その中で超スリリングなのはsteal homeの挑戦。最も有名なケースはやっぱり新庄剛志選手がオールスターゲームで元チームメイトの福原忍投手と矢野燿大捕手の隙をついた場面でしょう。成功したから語り継がれているが、もし失敗で終わってしまった場合はTOOTBLANとして記憶に残っているでしょう。 ⑤投手についても話そう。投げ方は色んなスタイルがあるよね。一番多いのはoverhandでしょうね。だからこそsidearmerやsubmarinerが貴重な存在だ。また青柳晃洋投手のような変則の投手もいるよね。青柳投手といえばfrom the stretchで投げることが多く、またslide stepが早くて打者を翻弄するのが得意。悪い面でいうとコントロールが定まらないことが時折あって、walkの数が目立つ。彼のゴロ率は高いけど、その反面、内野手のthrough the wicketsで足が引っ張られることもある。メジャーに挑戦する青柳投手を応援したい。先発は厳しいかもしれないが、set-up manとして通用すると思うよ。 さぁみなさん、どのくらい理解できたかな?和製英語の野球用語は以下の通り。 ◇ ◇ ①nice play=ファインプレー/inside-the-park home run=ランニングホームラン/bang-bang play=クロスプレー/slide headfirst=ヘッドスライディング/play at the plate=バックホーム/tag out=タッチアウト/shin guards=レガース/exciting play=ハッスルプレー ②ground-rule double=エンタイトルツーベース/batter’s eye=バックスクリーン/swing for the fences=フルスイング/RBI double=タイムリーツーベース/score=ホームイン ③bunt for a hit=セフティーバント/slash bunt=バスター/high bounce=バウンドが高い/grounder=ゴロ/blooper=ポテンヒット/bunt with two strikes=スリーバント/check swing=ハーフスイング/jersey=ユニホーム/hit by pitch=デッドボール ④steal home=ホームスチール/TOOTBLAN=ボーンヘッド ⑤overhand=オーバースロー/sidearmer=サイドスロー/submarine=アンダースロー/from the stretch=セットポジション/slide step=クイックモーション/walk=フォアボール/through the wickets=トンネル/set-up man=セットアッパー ◇ ◇ やっぱり言語って難しいよね?けれど語学上達に向けて一つ提案させてください。大好きな物とくっつけて学習すれば苦にせず楽しく学べると思う。2025年に新しい挑戦をしたいみなさんにエール(これも和製英語だよ!)を送らせてもらいます。 ◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。