【ひねもすのたりワゴン生活】滋賀から城崎、そして神戸 5日間1500㎞のクルマ旅 その1
甦る9日間、2000㎞の思い出
3年前、ちょっとした思いつきから、9日間2000㎞のクルマ旅に出かけた。とりあえず、最遠経由地を岡山県倉敷市の下津井に定め、あとはざっくりとした計画だけ。その行程で必要になりそうなものを全部、相棒のカーゴルームに積み込んで、あとは気分次第、天気次第、予算次第のぐうたら旅だ。思いつきで立ち寄り先はどんどん変わるし、予定ルート通りに進んでも、そうでなくても結構。こんなこと、飛行機や新幹線では絶対に無理、まさにクルマの独壇場だ。その顛末はこの連載で紹介してきたのでご覧の方もいらっしゃると思う。
さて、この春。そんな旅を思い起こしていたら、またまた足を伸ばしたくなった。このところ、ロングドライブはご無沙汰で、せいぜい東京から仙台の日帰り程度。この時は身内の葬儀があって、行程を楽しむという要素は皆無の“移動手段”としてのドライブだったから、速く、そして安全に往復できればそれでよかった。
で、3年前のような旅を楽しむためのロングドライブが恋しくなった。あの思い出と歓びは頭の片隅にずっと陣取っていて、ヘビーなロケから帰ってきたり、締切をようやくクリアしたり…そんな時にふわっと甦る。
今回は、さすがに9日間もの長丁場を用意することはできなかったけれど、5日くらいならなんとかなりそうだった。ちょうど神戸に出かけなければならない事情もあったので、それを絡めれば一石二鳥。
昨年9月、長崎県天草市で同地の陶芸家、濱田稔博さんの遺作展が開催されたのだが、そこを訪ねた際に入手した作品の数々を、神戸に住む親族宅で預かってもらっていたからである。かなりの数だったので宅急便で送るのも不安だし、そろそろ受け取りに行かなくては…と、思っていたところだった。つまり、前回、下津井滞在が必須だったように、今回は神戸の滞在が前提になる。
そこで、ざっくりとルートを考えた。3年前には東京から東名高速道路を滋賀に向かい、近江八幡でランチをとって、そのまま奥琵琶湖経由で大湖をぐるりと回り、最初の夜を大津市で迎えた。その時、近江八幡は2時間ほどの滞在だったけれど、その街並みが妙に心に残っていて、後ろ髪を引かれる思いで後にしたのである。1度、近江八幡に泊まってみたい…そんな想いがずっと残っていて、今回はぜひそれを叶えたいと思った。そこから旅の妄想が始まったのだ。