”2050年までにキリスト再臨”を信じる人々がイスラエルを支持する理由とは?
個人主義が黙示録的終末論を呼び寄せる
クリスチャン・シオニズムへの批判は、反ユダヤ主義と受け止められ兼ねないため特に欧米では表明することが難しい。欧米の主流派のキリスト教徒、つまり非福音派のキリスト教徒は、キリスト教の歴史的な反ユダヤ主義を悔い改めるために、イスラエルによるパレスチナ人への虐待については沈黙してしまう傾向が強い。クリスチャン・シオニズムを巡る問題は、米国のリベラル寄りのメディアかイスラム教圏のメディア(残念ながら私は英語で発信されているものしか確認できていないが)ではしばしば取り上げられているが、米国のマスメディアが表立ってこの問題を取り上げているのはあまり見たことがない。 もちろんイスラエルのパレスチナに対する残虐な仕打ちを理解したキリスト教徒たちの中には、確実にクリスチャン・シオニズムを反省する動きも生まれており(著者が調査する日本の福音派の一部にもディスペンセーショナリズムへの反省が見られることを付言したい)、パレスチナとの連帯を示す運動も拡大している。先述のアフリカ系アメリカ人についても、2024年に出版され米国では大きな話題になったタナハシ・コーツのThe Message(One World 2024)のように、パレスチナとの連帯を表明する動きが目立っている。 しかし、冒頭にも述べたように、米国ではクリスチャン・シオニズムはナショナリズムと結びつき、民主党はもちろん共和党の一部からさえ批判を浴びているにもかかわらず勢力を増しているのが現状だ。筆者が不穏なものを感じるのは、クリスチャン・シオニズムが、先にも述べた「最終戦争(ハルマゲドン)」を信じるディスペンセーショナリズム(千年王国説)と結びついている点である。事実先述の通り、多くのクリスチャン・シオニストたちは、現在の戦争状態を聖書の中の預言の成就とみなしている。これがキリスト教右派=福音派による戦争肯定、少し強い言い方が許されるならば、パレスチナの人々の積極的な「見殺し」に繋がっている。