”2050年までにキリスト再臨”を信じる人々がイスラエルを支持する理由とは?
「イスラエルの民」が政治利用されてきた経緯
キリスト教徒たちが唱えるクリスチャン・シオニズムがユダヤ人によるシオニズムより先行していたという事実、そして今もなお、数としても、政治力としてもクリスチャン・シオニストがユダヤ人シオニストを圧倒しているという事実は、欧米諸国がイスラエルを止められない理由を理解する上で看過できない事実である。しかもクリスチャン・シオニストたちが関心を寄せているのは、あくまでも聖書に基づいて想像された「イスラエルの民」であり、現実のユダヤ人ではないという点が重要だ。 そもそも欧州のキリスト教徒は中世までユダヤ人をイエス・キリストを十字架につけた民として、差別し、繰り返し迫害してきた。クリスチャン・シオニストもこの思想を前提としており、イスラエルの国民たちがキリスト教徒にならない限り「地獄に落ちる」と考えているため、実は反ユダヤ主義者であることも少なくない。 先述のバルフォアについても、彼はイスラエルの建国に尽力しながら、現実のユダヤ人を蔑視していたことで知られている。それでも多くのユダヤ人シオニストがバルフォアを英雄として称えているように、彼らはクリスチャン・シオニストの反ユダヤ主義に目を瞑り、ユダヤ人至上主義の国家をパレスチナに樹立するという共通のビジョンの実現を優先している。つまりイスラエル右派は、最終的には異なる目的を達成しようとしているクリスチャン・シオニストとの協力を、便宜的に選んでいる状況にある。 現代の米国の福音派はもちろん、実は歴史を通じてアメリカ人の多くが、実在するユダヤ人ではなく、イメージの中の「イスラエル」に並々ならぬ関心と熱意を抱いてきたことについては、政治学者、ウォルター・ラッセル・ミードの著作が詳しい。 「アメリカとイスラエルの関係は、アメリカの外交政策において最も重要な関係ではないし、これまで一度もそうであったことはない。 イスラエルはアメリカにとって最も重要な同盟国でもなく、最も価値ある貿易相手国でもない。 しかし、ユダヤ人が聖書の地に戻り、そこに国家を建設するという考えは、アメリカの宗教と文化における最も強力なテーマと大切な希望のいくつかに触れるものである。」(The Arc Of A Covenant - The United States, Israel, And The Fate Of The Jewish People, Knopf 2022, p.16)