日本独自の成長を遂げた“紅茶市場” 40周年『リプトン』がもたらした「気軽に屋外で紅茶を飲む」という革命
■大幅リニューアルを敢行も、たった1年で元の味に戻すことに…「でも、それは”失敗”ではなかった」
こうして順調に推移していた『リプトン ミルクティー』に大きな転機が訪れる。それは2020年、『リプトン ロイヤルミルクティー』へのリニューアルだった。 「『リプトン ミルクティー』は2008年を売上のピークとして、それ以降、牛乳を除く紙パック飲料市場の縮小とともに減少してきました。学生数の減少や、タピオカブームで様々な競合品が出たこともありますが、一番大きかったのは2020年からのコロナ禍です。人々の通学・通勤の機会が減り、コンビニで買われる数が一気に減りました。今後もお客さまに選ばれ続けるためには、ここで期待感を高めるリニューアルが必要だと考えたのです」 この時、乳固形分を1.5倍以上にして、紅茶飲料から乳飲料へと変更。茶葉も5%増やして、より本格的な美味しさが感じられるようにリニューアルを行った。この『ロイヤルミルクティー』は発売前の消費者調査でも良い評価を得て、発売後の初速も好調だった。ところが、しばらくして「元の味に戻してほしい」との声が寄せられるように…。 「『従来品に戻してほしい』とのお声が667件もあり、これは当社最多の問い合わせ数でした。多い日には1日40件もいただくこともあり、これは尋常ではないと感じました。我々スタッフは1通1通目を通しましたが、『高校生の時からずっと飲んでいました』『今までのミルクティーがなくなって、身近な相棒がいなくなったような気持ちになりました』など、皆様の強い気持ち、思い、熱量を感じて、まるでラブレターのようだと社内で話していました」 こうした反響を受けて、「何とかしないといけない」と社内で対策を検討。その結果、発売1年足らずで元の味に戻すという、業界でも異例の対応を英断した。 「まず『リプトン ミルクティー』に戻すのか、『ロイヤルミルクティー』をさらにリニューアルするのか、全然別の新商品を出すのか、など様々な選択肢がありました。『発売1年で元に戻すのは時期尚早』という慎重な意見もあり、何が最善なのかという議論がたくさん行われました。結局、お客さまが一番望まれていることは何かと考えた時、”『リプトン ミルクティー』を復活させること”が最善と判断しました。お客様のお声に真摯に耳を傾けて寄り添っていくことは非常に大事だと分かり、大きな学びになりました。 元に戻したこと自体を”失敗”とはとらえていません。ただ、ミルクティーを終売して『ロイヤルミルクティー』を出す前に、もう少しお客様の声に真摯に耳を傾ける必要があったのだと。そこは反省点としてあります。やはり40年も愛されているロングセラー商品だからこそ、味というのはすごく慎重に決める必要があると思っています」