トランプ氏「悪い遺伝子が持ち込まれている」暴言止まらず。日本で報道されない大統領選【直前解説】
「アメリカにはたくさん悪い遺伝子が持ち込まれている」
ニューヨークでの集会の2週間ほど前、トランプのこんな発言が炎上したことがある。 「バイデンやハリスが入国させている移民の多くは凶悪な殺人犯であり、その多くが、複数の人間を殺している。そいつらは、アメリカに来て幸せに暮らしている。殺人犯というのは、遺伝子で決まる。私はそう信じている。今アメリカにはたくさんの悪い遺伝子が持ち込まれているのだ」(10月8日付ロイター報道) トランプは前から、特定の人間が優れた遺伝子を持っているという考えにこだわっている。 以前にも、白人ばかりの聴衆にむかって「君たちは良い遺伝子をもっている」と言ったり、自分自身が優れたドイツの遺伝子をもっていると語ったりしたことがあった。このようなトランプの発言について、「優性学に基づいたナチスの人種差別主義と同じではないか」と指摘する声が少なからずある。 トランプがこれまでに侮蔑してきたマイノリティにはキリがないので、もはや思い出せない。ただ一つ言えるのは、トランプにとっては、ヨーロッパ系白人移民以外はどのマイノリティも似たようなものであり、ランクの低い人種だということだ。それなのに理解に苦しむのが、移民や有色人種の中にもトランプを支持し続ける人がいるということだ。 「トランプはあなたの人種(たとえばヒスパニック系)に対してひどいことを言っているのに、なぜ彼を支持しつづけるのですか?」とたずねると、そういう人たちは、自分は「バカにされる側」には入っていないと感じているようなのだ。 しかし、今回の集会でプエルトリコをバカにしたのは、戦略的に考えた上でのことだったのだろうか?(知らない人が多いかもしれないが、そもそもプエルトリコはアメリカ領だ) 全米に500万人以上いると言われるプエルトリコ系は、アメリカに住むヒスパニックの中でも2番目に数が多い。住民数では、ニューヨークが最も多いが、いくつかの重要な州(フロリダ、ジョージア、ノースカロライナ)、それに今回の選挙の雌雄を決する激戦州とみなされるペンシルバニア州にも多く、フィラデルフィアだけで約27万人が住んでいるという。 また、プエルトリコ系の人気芸能人であるジェニファー・ロペス、Bad Bunnyなどは、27日以来、自らのSNSを使って「ハリスに投票しよう」と強く訴えかけている。ロペスは、10月31日、激戦州ネバダ州でのハリスの集会で、涙を流さんばかりに熱のこもった応援演説もした。 また、このイベントにおけるトランプの一連の発言の中で、特にメディアの懸念の的になっているものがある。 彼はいかにも秘密をバラしたくて仕方ないといった様子で、こう言ったのだ。 「ジョンソン下院議長と私にはちょっとした秘密があるんだ。この小さな秘密のインパクトは大きい。我々は下院選挙で非常にうまくやれるはずだと思う。今はその秘密について話せないが、選挙が終わったら話す」 この発言は、トランプが選挙で負けた場合に結果を覆すべく、下院議長も巻き込んで既に準備を整えているという仄(ほの)めかしなのでは?と懸念をもって受け止められている(10月28日付MSNBC)。
ミシェル・オバマ、男性有権者に語る
最後に、10月26日、激戦州のひとつであるミシガン州で行われたカマラ・ハリスの集会についても簡単に述べておきたい。 ミシェル・オバマの登壇は、8月の民主党大会以来で、ハリスのために30分以上にわたって熱弁をふるった。
渡邊裕子