トランプ氏「悪い遺伝子が持ち込まれている」暴言止まらず。日本で報道されない大統領選【直前解説】
「海に浮かぶゴミの島」発言
トランプのスピーチは、いつものことではあるが、嘘と誇張、扇動的な言語に満ちていた。 たとえば、最近ノースカロライナを襲ったハリケーンについて、「バイデン政権は、不法移民を連れてくるのにお金を使いすぎて、災害対応の資金がなく、ノースカロライナの人々は援助を受けられずにいる」というものや、「(バイデン政権の政策のせいで)ニューヨークの犯罪は激増している」などだが、いずれも事実誤認だ。また自分が大統領になれば、インフレはなくなり、ガソリン価格は今の半分になるとも言った。 登壇者の一人、トランプの弁護士で元ニューヨーク市長のルディ・ジュリアーニは、ガザにおける紛争でハリス氏が「テロリストの側」にあり、パレスチナ人を米国に呼び寄せることを望んでいると述べていたが、これももちろん正しくない。 なおジュリアーニは、2020年大統領選でトランプ氏の票が盗まれたという虚偽の主張を行ったことで、ニューヨーク州の弁護士資格を剥奪された。また同選挙に絡む名誉棄損の訴訟に敗訴し、1億4800万ドルの支払いを命じられ破産申請をしている。 しかし何よりこの集会に爆発的なエネルギーを与えていたのは、移民に対する憎悪と侮蔑だ。 トランプは、選挙で勝利した暁には、「移民の侵略」を止めるべく、「米国史上最大の強制的移民送還プログラムをただちに開始する」と主張。 さらに、前科のある移民を強制送還するため 「敵性外国人法」(1798年制定)を発動するとも述べた。これらトランプの排他的な発言のたびに、聴衆は歓声と拍手で盛り上がった。 トランプ以外の登壇者も負けずにひどかった。 コメディアンのトニー・ヒンチクリフは、プエルトリコを「海に浮かぶゴミの島」と言い、 ヒスパニックおよび黒人についての人種差別的なジョークで笑いをとった。元Fox News看板キャスターのタッカー・カールソンはカマラ・ハリスを「サモアとマレーシアのハーフで、IQの低い元カリフォルニア検事総長」と呼んだ(トランプも、ことあるごとにハリスを「頭が悪い」と言っている)。 それ以外にも黒人に対する侮蔑、「カマラ・ハリスはキリストの敵」「彼女は悪魔」「クソな不法移民たち( fucking illegals)は、やりたい放題だ」 「トランプを支持しない奴らはぶっ殺さないといかん」といった過激かつ下品な言葉が飛び交った。 トランプは、自分を批判するメディアは「内なる敵」「人民の敵」であると繰り返し語り、そのたび会場が熱狂的に盛り上がるという、異様な光景だった。 なお、ヒンチクリフの「プエルトリコはゴミの島」発言は、即座に大炎上し、大批判を浴びた。しかし、トランプによれば「自分はあのコメディアンの男のことは知らない。会ったこともない。誰かが登壇させただけ。なぜあそこに彼がいたのかもわからない」ということだ(10月29日付Fox News)。 これは、1月6日の議事堂襲撃について「自分は議事堂襲撃とは何の関係もない。扇動などしていない」というトランプの主張と重なる。 トランプは Fox News のインタビューで「自分ほどプエルトリコのために多くを成し遂げた大統領はいない。プエルトリコ人たちにはいつもすごく感謝される」とも述べているが、2017年にプエルトリコがハリケーンに直撃された際にトランプ政権の対応が遅かったことや、彼が住民にペーパータオルを投げつけた映像は、多くの人の記憶に残っている。今回の「プエルトリコはゴミの島」発言は、その記憶を蘇らせることになった。