名門大生なら報酬2300万円、米国の「卵子提供ビジネス」の光と影
米国では近年、体外受精(IVF)を用いた不妊治療を受ける人々のために卵子を提供する若い女性を、高額の報酬と引き換えに募集する企業が増えている。しかし、ロサンゼルスを拠点とするスタートアップのCofertility(コファティリティ)は、より良心的なビジネスモデルで卵子のドナーを募集している。 「卵子を冷凍保存するのに最適な時期は、まだ若くてその費用を支払えない時期です」と、コファティリティの創業者でCEOのローレン・メイクラーは話す。彼女が指摘する卵子の冷凍保存が抱える2つの課題は、タイミングとコストだ。 女性は、一般的に妊娠を試みて失敗した30歳以降に高額な不妊治療を受けることが多いが、この時期には、卵子の数が減少し、健康な卵子が少なくなっている。そのため、将来的に子どもを望む多くの女性が、卵子を凍結保存して将来の妊娠に備えようとしている。しかし、採卵の手続きとその際のホルモン剤の投与には1万ドル(約153万円)以上が必要で、凍結保存のコストは年間500~1000ドル(7万6000円~15万円)とされており、多くの若い女性には手が届かない。 そのためコファティリティは、若い女性が保存した卵子の半分を第三者に提供することを条件に、無料で10年間の凍結保存のサービスを提供している。「私たちが提案しているのは、現金報酬をなくし、女性が自分の将来のために半分の卵子を保持できるようにするサービスです」とメイクラーは述べている。 欧州諸国の大半は、卵子のドナーに報酬を支払うことを禁じており、米国でも倫理的にその行為は推奨されていない。しかし、米国ではドナーに報酬が支払われる場合が多く、アイビーリーグの出身者などの場合は、その額は通常の数倍にも及んでいる。 ■TikTokの「卵子ドナー募集」広告 イェール大学を今年卒業したばかりのノエル・ロックウェルは、ある日TikTokで卵子の提供に関する広告を目にしたという。そこには、卵子を提供すると1万ドル(約153万円)の報酬とフロリダへの無料旅行がプレゼントされると書かれていた。彼女が、その後、大学の新聞のバックナンバーの広告を調べてみたところ、アイビーリーグの在学生や卒業生の卵子であれば、数万ドルの報酬を支払う人々も多いことがわかったという。 ロックウェルは、スリムな体型で背が高く青い目を持っており、大学での成績も高いスコアをマークしていた。あるクリニックに、彼女の卵子にいくらの値がつくかを問い合わせたところ、ベースラインが2万5000ドル(約380万円)で、相手によっては15万ドル(約2300万円)を支払う場合もあるとの答えだった。 アラバマ大学の准教授で医学人類学者のダイアン・トーバーによると、米国の卵子提供者の36%は、学生ローンの返済や学費の支払いのために卵子を提供しているという。