名門大生なら報酬2300万円、米国の「卵子提供ビジネス」の光と影
「高額の報酬」に潜むリスク
銀行で働くマイアミ在住の47歳で、ゲイのマイコは、コファティリティのドナーの卵子と彼自身の精子を使った代理母出産を通じて子どもを設けようとしている。彼も、名前をオープンにできるドナーを選んだが、匿名のドナーを選ぶよりも時間がかかったという。「ニューヨークでドナーに直接会うことができました。彼女と彼女の母親にも会って、大きなハグをしました。自分が子供だったら、ドナーが誰であるか知りたいし、いつかその人に会って感謝を伝えたいと思うでしょう」と、マイコは語った。 ■「高額の報酬」に潜むリスク 卵子のドナーは一般的に、自然な周期よりも多くの卵子を成熟させるように卵巣を刺激するために、10~12日間をかけて自宅でホルモン注射を行い、その後、医師からの「トリガー注射」を受けて、クリニックで卵子を取り出す手術を受ける。 このプロセスには、いくつかの副作用も想定されるが、ほとんどが軽度で一時的なものだ。しかし、IVFの研究は広く行われているものの、若年層の卵子ドナーや繰り返しの卵子提供の長期的な健康への影響についての研究はほとんどない。そんな中、NYUグロスマン医学大学院のリンダ・カーン准教授は、冷凍卵子の提供が一般化したことで、クリニックには女性をさらに多くの卵子提供に向かわせるような金銭的なインセンティブがあると指摘する。 「彼らは、ドナーに1万ドルの報酬を与えて、50個の卵子を採取して販売するよりも、70個を採取したほうが儲かります。ドナーからより多くの卵子を採取すればするほど、彼らはより多くの利益を得られるのです」と彼女は語る。 ペンシルバニア州に住むブリ・ウェルシュは昨年、高額な報酬に釣られて卵子提供を行った。27歳の彼女は、嫌いだった州立刑務所の仕事を辞めたばかりで、現金を必要としていたため、2回連続で提供したという。ウェルシュは、最初の卵子提供の後に軽い痛みを感じたが、2回目の提供後はさらに酷い激痛に襲われて夫にトイレまで運んでもらったという。 「それでも私は悲鳴を上げ続けていました。それぐらい酷い痛みだったんです」と彼女は話す。現在、ウェルシュは夫とともに自分たちの赤ちゃんを望んでいるが、妊娠に苦労している。彼女のエストロゲン値は高く、それが妊娠を妨げる可能性があるとされており、卵子提供との関連があるのではないかと悩んでいる。しかし、卵子の提供をした後の妊娠能力に与える影響に関する研究は行われていない。 一方、現在27歳のルビーと名乗る女性も、大学3年生だった2018年に4万2000ドル(約642万円)の学生ローン返済のために初めて卵子を提供した。彼女は、不妊治療クリニックがウェブに掲載していた「1回の提供で1万ドル」の広告に応募して提供を行った。そのプロセスは、不快ではあったが、耐えられないほどのものではなかったため、2020年に2回目の提供を行った。 すると、今度は救急車で運ばれるほどの激痛に襲われた。今では、その痛みは治まったが、彼女はそれ以降に以前よりも重く、痛みを伴う月経に苦しんでいる。 ルビーは、もう卵子を提供する計画はないが、報酬が十分に高ければまた検討するかもしれないとも述べている。しかし、先日はあるカップルが彼女に連絡を取り、5万ドル(約764万円)の報酬を提示したが、彼女は最終的にそれを断った。 「そのお金があれば、新しいビジネスを始めたり、家のローンの頭金になるかもしれません。でも、その背後にはとても大きな怖い疑問がつきまとうのです。私は、お金のために将来の健康を危険にさらしているのではないかと」と彼女は語った。
Emma Whitford