名門大生なら報酬2300万円、米国の「卵子提供ビジネス」の光と影
マリア・シャラポワが出資
米国の不妊治療産業の市場規模は、調査会社のIBISワールドによると年間80億ドル(約1兆2000億円)とされており、卵子の提供ビジネスは、より多くの女性が出産を遅らせ、IVFが効果的な選択肢となったことから、着実に成長している。フォーブスがPitchBookに依頼した調査によれば、2018年から2024年10月にかけて、プライベート・エクイティ企業は米国の不妊治療分野に75億ドル(約1兆1480億円)を投資していた。 ■マリア・シャラポワが出資 「卵子提供は、不妊治療において最も課題が多い領域です」と話すコファティリティのメイクラーは、自身が不快な思いをしたことがきっかけで、このビジネスを立ち上げたという。2017年にウーバーの幹部だった彼女は、医師から将来的に卵巣を失うかもしれないと告げられた。その当時の彼女は、子供を持つ準備ができていなかったが、卵子提供の選択肢を調べた結果、自分と同じバックグラウンドを持つドナーを希望する場合の報酬が非常に高くなることに気づき、信じられないと思ったという。 現在36歳のメイクラーは、幸いなことに自身の卵巣を保持し、2021年に第1子を出産した後に会社を立ち上げて、翌年のシードラウンドで500万ドル(約7億6000万円)を調達した。コファティリティは、その後も追加で資金を調達したが、金額は公表していない。同社の投資家にはイニシャライズド・キャピタルやオフラインベンチャーズ、さらにテニス界のスター、マリア・シャラポワが名を連ねている。 コファティリティの事業モデルは、基本的には高度なマッチングサービスであるため、比較的低コストで運営されている。同社は、自社のクリニックを所有しておらず、外部のパートナーに依存している。また、マーケティングは主に、SNS広告や地下鉄のビルボート、対面イベント、口コミで行っている。メイクラーによれば、同社のサービスは常に150~200人のドナーをデータベースに保持し、子どもを望む親がドナーを選べるようにしている。 顧客が支払う料金は、新鮮な卵子か冷凍した卵子か、また受け取る卵子の数によって異なるが、ドナーの特徴に応じた価格の変動は起こらない。ただし、コファティリティのドナーの55%は、大学院の学位を持っている。 また、冷凍卵子の価格は、6個の場合は2万1000ドル(約320万円)、12個の場合は3万7200ドル(約570万円)とされている。ここには、契約書の作成やコファティリティへの手数料、さらに最初のドナーの卵子で赤ちゃんが生まれなかった場合の第2のドナーからの無料の卵子の提供が含まれている。 コファティリティで卵子の冷凍保存を行った28歳のローリーは昨年、去年、自身の将来の妊娠力の低下を心配し始めた。彼女は現在、パートナーがおらず、自分が子どもを持つのは、遅ければ30代の半ば以降になると考えたからだ。その結果、ローリーは卵子の凍結保存を考えたが、「自分で費用を払うのは絶対に無理だった」と話す。 しかし、昨年3月にコファティリティの広告を見つけた彼女は、8月にはカップルとマッチングして採卵を受けた。現在、彼女は自分が卵子を提供したカップルから健康な赤ちゃんの写真などをメールで受け取っている(コファティリティは、ドナーが親に対して匿名を希望するかどうかを選択できるようにしている)。 「最初は匿名で卵子を提供しようと思っていたけれど、今では彼らの家族づくりを手助けできたことを知って、とても満足しています」とローリーは話した。