ドラマあるある! 電気ショックで「戻ってこい!」は医学現場ではありえない!?
「意識不明の重体です」「全治3カ月の大怪我です」。ドラマやニュースでよく聞くセリフだが、実際の医療の現場ではほとんど使われないそう。現役医師である「外科医けいゆう」こと山本健人さんが、医者と患者の「誤解の素」になりそうな言葉を解説。『がんと癌は違います』から一部を抜粋してお届けします。
「心臓がポンプの機能を失っている」状態が「心停止」
「心停止」を、「心臓の動きが完全に止まった状態」のことだと思っている方は多いと思います。実は、「心停止」の中には「心臓が動いているケース」も含まれている、と言うと驚かれる方が多いのではないでしょうか? 名前に「停止」が入っているのに、「停止していない状態」も「心停止」と呼ぶのだとしたら、何とも不思議な話です。しかし、医学用語としての「心停止」は、心臓が動かなくなった状態だけを指すわけではないのです。 「心停止」は、以下の4つの状態の総称です。 ー 心室細動 ー 無脈性心室頻拍 ー 無脈性電気活動 ー 心静止 これらに共通するのは、「心臓が動いていないこと」ではなく、「心臓がポンプの機能を失っていること」です。心臓は全身に血液を送り出すポンプですが、この機能が完全に失われた状態が心停止なのです。 心室細動と無脈性心室頻拍は、いずれも致命的な不整脈です。心室細動では、心臓が細かく震えるように動き、無脈性心室頻拍では、細かく小さな収縮を繰り返しますが、いずれもポンプ機能は失われている状態です。確かに心臓は動いているのですが、血液が送り出せない以上、「機能的には」止まっているのと同義です。 一方、無脈性電気活動と心静止は、まさに心臓が動きを止めている状態です。無脈性電気活動は、少し難しい言葉ではありますが、文字通り「脈はないが電気活動はある」という状態です。 心臓が動くのは、心臓を構成する筋肉の中を電気信号が指令として走っているからですが、「電気信号が走っているのに心臓が動いていない状態」が無脈性電気活動です。心電図モニターをつけると脈の波形は観察できるのですが、聴診器を当てても心臓の拍動は聞こえません。 一方、心静止は電気信号すらない状態です。つまり、ドラマでもよく見るような、心電図モニターに真横に一本線を引いたような、フラットなラインが現れる状態が心静止です。