「交際相手に障害のある弟の話ができなかった」恋愛や結婚に憧れるも「きょうだい児」の女性弁護士は「悩んだ末エリートコースを蹴って」
── 悩みの深さが伝わります。何が決め手になりましたか。 藤木さん:大手法律事務所の面接では、弟の障害の話は求められてない話題だと感じて。なぜ弁護士になったのかというストーリーの中に、弟の障害の話が入ってないと、私の中では絶対に成立しないのだけれども、面接では言えなかったんです。一方で、障害者の分野の弁護士の先生たちには洗いざらい話せて受け止めてもらえましたし、先生方がみなさん明るく、楽しく、信念を持って活動されているのも清々しくて。結果的にきょうだい児の活動をしていくための時間的な自由も確保できる父の事務所を選びました。
── 大手法律事務所に入れば、いくらでもキャリアを積めそうですが、藤木さんとしては、きょうだい児であることが人生の核にあったのですね。 藤木さん:そうですね、きょうだい児に関する仕事をすごくやりたいと思ったので。ひとまず1年は大手法律事務所で働くという選択肢もありましたが、激務をこなすのは私には無理だと思いました。
■小学生のころから結婚できるか不安だった ── きょうだい児であることが、恋愛に関してハードルになることはありましたか。
藤木さん:ありました。弟の耳が聞こえないとわかったとき、母が周囲から、「弟の耳が聞こえないのは母親のせいだ」と言われているのを聞いて、小学生になるかならないかの時点で「結婚できるんだろうか?」と不安を感じていて。それに子育てに苦労する母の姿を見ていたので、子どもを持つことにも積極的になれませんでした。これは家庭環境などの違いが大きいので、きょうだい児それぞれで考え方はまったく違うと思います。 ── 結婚に対しても消極的だったのでしょうか。
藤木さん:恋愛や結婚はできないかもしれないと思いながら、すごく憧れがありました。それはたぶん、家を出たいという気持ちと関連していたと思うんです。当時は、父や母はありのままの自分を認めてくれていないのでは…と感じていたので、恋愛で相手に認められたいという思考になりがちで。 でも、高校生や大学生になり実際に交際相手ができると、弟の話をどうするかということで悩み始めました。この人を私の人生に巻き込んでいいのかなって重く考えてしまって。でも、この点もきょうだい児によって個人差があると思います。ハードルを感じずに結婚される方もいるし、むしろ「頑張ってきたんだね」って相手のご家族が歓迎してくださる場合もあるので。私の場合、小さいころから弟といると周囲から冷たく見られたりして、わが家は普通じゃないんだという感覚があり、結婚して「普通」に落ち着きたいという思いが強かったんです。