【新潟記念回顧】シンリョクカが復活の重賞初制覇 明暗分けた長い直線の攻防、11年ぶり牝馬Vを手繰り寄せた「勇気」と「勝負勘」
脈々と続く競馬格言
2024年9月1日に新潟競馬場で開催された新潟記念はシンリョクカが新馬戦以来の2勝目を重賞初勝利で飾った。レースの明暗を握ったのは、新潟特有の長い直線だった。 【新潟記念2024 推奨馬】単複回収率100%超えデータ2つに該当! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 新潟記念に牝馬が6頭出走するのは史上最多という。たしかに出走中半数を牝馬が占める中距離重賞は珍しい。最有力の3歳ライトバックの競走除外は残念だった。人馬とも無事であってほしい。また次の機会があることを祈る。 さて、勝ったのはアクシデント明けの4歳牝馬シンリョクカ。牝馬の勝利は2013年コスモネモシン以来11年ぶりだった。 近年の新潟記念は牝馬苦戦が伝えられていた。だが、古い記憶を呼び覚ましてみると、新潟記念を勝った牝馬は数多い。ダイナフェアリー(サマーサスピション、ローゼンカバリーの母)、アイリッシュダンス(ハーツクライの母)、パルブライト、トーワトレジャー、ヤマニンアラバスタ、アルコセニョーラ。軽ハンデ、平坦コースを味方につけ、夏の新潟で躍動した。 夏は牝馬、新潟記念は牝馬。これは今も昔も変わらない。過去10年という限られたデータから結論を導き出す身としては後悔しかない。脈々と続く競馬の格言を無視してはいけないのだ。
長い直線にひるまず立ち向かったシンリョクカ
シンリョクカの勝利によって、木幡初也騎手と竹内正洋調教師は重賞初制覇を達成した。念願のタイトルに喜びを感じる以上に、シンリョクカの復活に安堵したにちがいない。 4月の福島牝馬Sでは3番人気に支持された。新馬勝ち直後に阪神JF2着と将来を嘱望された存在だったが、その後は思うような結果を残せないなか、中山牝馬S3着で復調への兆しをみせた。福島牝馬Sは重賞初制覇の好機でもあった。 しかし、3コーナーで他馬の動きの影響を受け、落馬競走中止。人馬ともケガを負った。木幡初也騎手は夏の福島で戦列に戻り、シンリョクカは新潟記念でターフに戻ってきた。 その復帰戦、まずは無事にという祈りが勝利という結果でかえってくるとは。シンリョクカの心の強さには恐れ入る。さすがは新馬勝ち直後にGⅠで激走しただけある。なにか持っている馬だ。 シンリョクカの母レイカーラの名に聞き覚えがあった。かつてテレビ番組の企画で篠田麻里子さんが命名したからだ。 最終的には格上挑戦でターコイズS(当時はオープン特別)を勝ち、5勝をあげた。ひとつ上の兄は6歳でマイルCSを勝ったダノンシャーク。じっくり着実に強くなる一族なので、シンリョクカもここからだろう。アクシデントを乗り越え、逞しさを増した今後に期待しよう。 レースの前後半1000mは58.9-59.1。前走京都で飛ばしたアリスヴェリテが逃げる展開は大逃げの予想もあったものの、実際はスローに近い。離し気味ではあったが、結果的にはやっと平均ペースでも縦長。みんなアリスヴェリテの逃げを警戒し、深追いせず、後ろに控えた有力馬に目がいった。 とはいえ、12秒台は最初の200mと3、4コーナーの残り1000~600mだけ。適度に荒れた馬場で極端な上がり勝負にならなかったのも、シンリョクカのいい部分を引き出した。 最大の勝因は、シンリョクカと木幡初也騎手が後ろの有力馬を恐れることなく、ひたすら前を走るシンリョクカを追いかけ、とらえに出た勇気と勝負勘にある。新潟の直線658.7mは長い。ゴールは遥か遠く。それでも早めに先頭に立ち、最後まで踏ん張り切った。 外からやってきたキングズパレスを振り切ったところで勝負あったと思ったが、最後に馬群を縫って後方にいたセレシオンが襲いかかった。それでも、ゴール板ではハナだけ前にいた。長い直線にたじろがず、位置取りの優位性を活かした粘り強い競馬に拍手を送りたい。