女子バスケ“残り15.2秒の奇跡”はなぜ起きたのか…強豪ベルギーを1点差で破り悲願の初4強!
勝てば歴史が変わる大一番へ。2017年4月から指揮を執るトム・ホーバス・ヘッドコーチは、予選ラウンドの3試合で長岡萌映子(27・トヨタ自動車)を先発させてきたパワーフォワードを、初めて宮澤夕貴(28・富士通)に代えて臨んだ。 先発の変更が告げられたのは当日朝。ベスト8に進出したリオデジャネイロ五輪でも主軸を務めた長岡は「葛藤はありました」と率直な胸中を明かしながらも、100点ゲームで快勝した女子ナイジェリア代表との予選ラウンドのスタッツを振り返って納得した。 17分あまりの出場時間で、宮澤は5本の3ポイントシュートを決めていた。トランジションの速さで相手を疲弊させ、3ポイントシューターが得点を重ねる「スモールボールラインナップ」こそが、東京五輪での上位進出へ向けて描かれた青写真だったからだ。 193cmの長身を誇る大黒柱、センター渡嘉敷来夢(30・ENEOS)が右ひざの故障で東京五輪を断念した。だからこそ、外国勢と比べてどうしても劣るインサイドの高さを、3ポイントを武器とするシューターを同時起用する戦法で補っていくと決めた。 実際、宮澤はベルギー戦で7本の3ポイントシュートを決めている。第3クオーター途中で13点のリードを奪われる展開で全員が抱いた思いを、宮澤は「まだ大丈夫だから、いまは我慢しようと円陣を組んだときにみんなで言っていました」と言い、こう続けた。 「自分たちには3ポイントシュートがあるから、絶対に波が来ると信じていました。そのためにも大事なのは、ディフェンスとリバウンドだと思っていました」 キャプテンを務めるセンター高田真希(31・デンソー)の2本を含めて、チーム全体でベルギーを3つ上回る14本の3ポイントシュートを決めた。そのなかで執拗なマークにあっていた林を、勝負どころの第4クオーター終盤でベンチへ下げるかどうか悩み、最終的には思いとどまったとホーバス・ヘッドコーチは笑顔で明かす。 「いつも大事なときに決めてくれるので。彼女を信じ抜いてよかったよ」 リオデジャネイロ五輪は準々決勝で女子アメリカ代表に喫した、64-110の惨敗とともに幕を閉じた。アメリカとは今大会の予選ラウンドでも顔を合わせ、最終的には69-86で敗れたものの、第1クオーターを30-28で終えている。 米プロリーグのWNBAでもプレーした渡嘉敷は、残念ながら間に合わなかった。それでもコート上の5人がお互いを助け合い、高め合いながら献身的に、なおかつ泥臭く勝利を求める戦い方の行き着く先を、高田は「金メダルです」と自信を込めて言う。 「今日のように40分間、動き続けられることが日本のよさだと思っています。リオに出場したチームもよかったですけど、今回のチームは身長がない分、全員でやるんだ、という気持ちがあるし、苦しい時間帯をみんなが信じ合って、最後まで動きを止めずにやり通せる。次も大きな相手になりますけど、最後までタフに動き回りたい」