人事部長が語る 「高い給与を払っても採りたい」50代転職者の特徴 “晩年期”の50代なのに重宝されるのはなぜ?
また、不正会計などの不祥事防止や国際競争力向上のために、「コーポレートガバナンス」に力を入れる企業が増えたことも大きい。 こうした、さまざまな外的要因から、「我も我も」と取り組みを強化し始めた日本企業が、慌てて人材確保に乗り出したのが、ここ数年の採用市場の主たる傾向だ。 だが、これらの職種を経験してきたスペシャリストは、そもそも母数が少ない。しかも、私が想像するに、彼らはえてして律儀で、真面目で、職人気質であるため、自社にとどまる傾向がある。果敢に転職に挑まないからか、転職市場になかなか出てこないのだ。
以前、こんなケースがあった。とあるベンチャー企業で採用を担当していた私は、「品質管理」のスペシャリストを探していたが、なかなかいい人が見つからず、苦戦……。ようやく見つかったのが、転職エージェントから紹介された大手メーカー出身の男性Aさん(54歳)だった。 自社の平均年齢からすると、できれば「40代まで」がありがたかったが、贅沢は言っていられない。あまり期待はせず、面談に臨むと想像以上に若々しく、快活な雰囲気や語り口にも好感が持てた。もちろん経歴も実績も申し分なかった。
Aさんの現職での年収は1000万円。ぜひとも当社に来てほしかったため、少し強気に1200万円の年収額を提示すると、先方から断りの返事が……。なんと他社から1500万円を提示されたらしく、そちらに決めてしまったというのだ。「やられた!」と思った。 この分野の人材獲得競争は思いのほか激しく、年齢も年収も高かろうと、いい人材ならあっという間に獲られてしまう。そのことを痛感した出来事だった。 Aさん自身もきっと驚いたであろう。これまで1000万円で雇われていたのが、ひとたび転職市場に出れば、1500万円の価値があるのだから。本来なら高値がつくのに、自身の市場価値を知らずに自社で飼いならされている50代は、実は多いのかもしれない。