SHAZNA、ラクリマ、マリス、F◇C…番組から生まれた「ヴィジュアル系四天王」偏見の矢面に立たされた彼らの真の実力
■ La’cryma Christi 異国情緒を醸す巧妙緻密なプログレロック 1994年に大阪で結成されたLa’cryma Christi。耳馴染みよい歌モノのロックでありながら、ハードロックやプログレッシヴロックまでも呑み込んだ音楽性を持っている。 “異国情緒”という言葉がこれほどまでに似合うバンドが居ただろうか。メジャー1stアルバム『Sculpture of Time』は東アジアから世界に放つロマネスクの旅といった趣がある。オープンニングを飾る「Night Flight」は、ハードロックのダーティさがベースにありながらも、このジャンル特有の浮遊感を併せ持っている。ずっしりとしたアンサンブルながらもサウンドが広がりを持つナンバーだ。 燦々とした情景を描いているわけではないにもかかわらずタイトル通りの雰囲気を放つ「南国」、そして「Ivory trees」の煌めくポップセンスも秀逸。楽曲のテーマをサウンドとして具現するレベルが驚くほど高い。そうした中で、La’cryma Christiの名曲としてあげたいのは「偏西風」だ。イントロのアルペジオギターに絡む、カッティングを絡めたもう1本のギター、蠢くベースライン。そこに突如としてスルっと入っていくボーカル……。巧みなアンサンブルアレンジが恐ろしいほど際立っている楽曲である。 この連載で触れてきたが、ロックバンドにおけるツインギター編成はこのシーンで大きく変わってきた。まったく違うフレーズが折り重なって楽曲を構成していくLUNA SEA、2本のギターが絡み合うことによってひとつのリフを形成するPIERROT……。しかしながら、La’cryma Christi はそれらのバンドともまた違うツインギターである。 KOJIとHIROのギターは一聴するとそれぞれ好き勝手に弾きまくっている印象を受けるかもしれない。しかし、お互いのフレーズに干渉することなく楽曲を構成しているのが、La’cryma Christiの妙だ。加えて、SHUSEのベースもかなり動いているし、LEVINのドラムも手数が多い。 そうした楽器陣の動きだけをピックアップしても細かいフレーズで構成されているのに、そこにメロディアスなボーカルが別に存在しているのである。自由闊達な楽器陣でありながら歌のメロディを邪魔しないという巧妙で緻密なアンサンブルアレンジ。それがLa’cryma Christiはプログレッシヴロックと言われる所以だ。