障がいのある自分が『大嫌い』だったと語る22歳の女性。しかし…「障がいがあっても好きなことをしたい」今をポジティブに生きるわけを語る。
FSHD(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー)という病気を知っていますか? FSHDとは、筋ジストロフィーの病型のひとつで、Facio(顔面)Scapulo(肩甲)Humeral(上腕) Muscular Dystrophy(筋ジストロフィー)の略です。そしてこの名前のとおり、顔や肩甲骨まわりの筋肉から弱くなり、個人差はありますが、口笛が吹けない、表情を作ることが困難、腕を上げることができないなどの症状が出る難病です。 この病気を患っているなぎささん。なぎささんは「障がいがあっても好きなことをする!」とできないことが多い中でも、工夫をしてできるようにしていく様子をSNSで発信しています。 【実際の写真9枚】小学生から現在までのなぎささんの様子(@nagisa__fshdさんより提供) 今回は、なぎささんに病気のことや普段の生活を発信することへの思いを聞きました。
人生でできなくなることが多すぎて頭が混乱…
小学校高学年のときに足が動きづらく、歩くのがしんどかったというなぎささん。また、表情筋も落ちてきたころ、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)だと診断されました。 「当時の記憶はあまり残っていないですが、この先の人生でできなくなることが多すぎて、頭が混乱していたと思います」とそのときのことを振り返ります。 小学生のころ、家から学校までの登下校の距離は2kmありました。また階段の昇り降りもあり、それがつらかった…と話します。ですが、通っていた小学校は田舎にあり、1学年1クラスでみんな仲がよかったため、クラスメイトは病気がわかっても発症前と変わらずに接してくれました。 中学校に入学したときには、階段の昇り降りや移動教室はクラスメイトの2倍の時間をかけていたといいます。 「かなり病状も進んでおり、すべてのことに対して配慮してもらわないといけなかったので、周囲の目がとても痛かったです」となぎささん。 そこで中学2年生の夏、車椅子になったことを機に支援学校に転校することなりました。
少しの工夫で、できなかったことをできるようにする
現在22歳のなぎささんは、月に1度の通院をしています。FSHDで日常生活に困っていることを聞いてみると「すべてのことに対して困っています」と話してくれました。さらに、転倒などをして骨折した場合、寝たきりになる可能性があるため、転ばないように細心の注意をはらって生活しているといいます。 そこで、少しの工夫でできなかったことができるようになる生活を、毎日試行錯誤をくり返しながら見つけているのです。 なぎささんは障がいの影響で腕が上がりません。そこで、たとえば髪の毛を結ぶときには、椅子やソファーなどの背もたれを使います。 「きれいに結ぶことは難しいけど自分ができることは極力自分でします」と話します。 「三つ編みとか、難しいものはできないけど練習してできるようになりたい!」と常に挑戦し続けていました。 使用しているヘアゴムはシルクで髪の毛が痛みにくく、なぎささんのお気に入り。大好きなピンクと白を購入したところからもおしゃれを楽しんでいる様子が伝わってきます。 また、高校3年生のときに「やりたいことをやろう!」と担任の先生に誘われたなぎささん。もともと音楽が好きで、楽器演奏をしてみたいとギターを始めました。アコースティックギターは指に力が入りにくく難しいのですが、エレキギターは弦が細いため、障害の影響で力が弱くても弾けるといいます。 そして、学生時代やお姉さんの結婚式などで弾き語りを披露したことも。 弾き語りを披露するなぎささん(@nagisa__fshdさんより提供)[/caption] なぎささんは「挑戦したい!やってみたい!ことが思いついたとき、今やらないといつ病気が進行してできなくなるかわからないので、思いついたときに行動するようにしています」と、その原動力を語ってくれました。 また「行動に移す、移せたことが大事だと思っているので、記録として残しています」と、体の負担も考え、体調と相談しながら無理はしないように注意しているといいます。 「乃木坂46」の推し活もしているなぎささん。推しと同じ、NIKEのキャップを購入した様子も発信していました。 最近のインスタグラムの投稿の冒頭に「もっと自分を好きになる暮らしがしたい!」と盛り込むようになります。その考えに至るまでにはこのような思いがありました。 「私はもともとネガティブで、障がい者である自分のことが大嫌いでした。だけどこの体とずーっと向き合っていかなきゃいけない、少しでも弱い自分を変え、自分軸で生きられるようになりたい。自分のことを認めて好きになろう!」 なぎささんは、新卒から勤めていた会社を昨年9月に退職しました。3年間勤めていた会社でしたが、3年目に多くの仕事を任されるようになり、長時間労働が当たり前に…。HSP気質で嫌と言えなかったなぎささんは、適応障害になります。2ヶ月休職して復帰しますが、長時間労働が変わらなかったため、退職することにしました。 そして、11月より新しい職場で仕事をすることが決まっています。 「障害があるからどこにも行けない、何も出来ないじゃなくて、障害があってもこんなことができた!行けた!と思える暮らしを作っていきたいです」と、理想の暮らしを話してくれました。 ※HSP気質…HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは、感受性が高く、環境からの影響を人一倍受けやすい気質を持つ人のこと。 ※適応障害…ある特定の状況や出来事(転勤、配転、新しい人間関係など)が、その人にとっての主観的な苦悩(とてもつらく耐えがたい感じ)を生み、そのために気分や行動面に症状が現れるもの。