DePIN(分散型物理インフラ・ネットワーク):VCが注目する暗号資産の最新分野は人気に相応した成果を作れるのか?
リスクと課題
FRNTのデータ・分析責任者ストラヒニャ・サヴィック(Strahinja Savic)氏によると、DePINプロジェクトは、取引所やマイニング、ステーキングインフラのような確立された投資と比較して、投資家にとってはリスクが高いという。「物理インフラの開発を奨励することは、プロジェクトに対する一段階上のコミットメント」とサヴィック氏は説明した。 DePINプロジェクトの大部分は、クラウドソーシングを行い、接続された現実世界の物理インフラを構築するインセンティブをユーザーに与えるための報酬の一形態として、トークンを使用している。 「長期的な価値が疑問視されるトークンを使って、コストのかかる物理インフラを構築するインセンティブを与えることは、難しいことだ」とサヴィック氏。「DePINは、リスクがあふれる暗号資産分野においても、特にリスクが高い」と続けた。 GSRのストラテジスト、ブライアン・ルーディック(Brian Rudick)氏もサヴィック氏と同じ意見だ。ルーディック氏は、躍進するDePINプロジェクトはいくつかあるだろうが、重要なことは提供される製品やサービスのクオリティと考えている。 「理論的には、DePINプロジェクトは、より低いインフラ構築コストを顧客に還元し、需要を喚起することができる。しかし実際には、提供されるDePIN製品やサービスは、何十年もかけて最適化された既存のソリューションよりもクオリティが劣る可能性があり、コスト面での優位性が打ち消される」とルーディック氏は語った。 だがルーディック氏によれば、レンダーのようなAI関連のDePINプロジェクトや、Akashのような分散型クラウドマーケットプレイスは注目すべきものだという。 Crypto.comのレポートでは、価格のボラティリティがDePINプロジェクトにとって課題となる可能性も指摘されている。DePINネットワークの報酬のほとんどは、プラットフォーム独自のトークンで支払われるため、これらのトークンの価格変動が長期的に貢献者の収益に影響を与える可能性がある。 「報酬を得ることが信頼できないと見なされれば、大きなボラティリティが継続的な参加を妨げるだろう」 ほとんどのDePINプロジェクトは、うまく運営するには需要と供給の両方を必要とする形式である、バーン(焼却)とミント(発行)の均衡モデルに従っている。 このモデルでは、貢献者はトークンを獲得し、利用者が支払いにトークンを使用する際にトークンを焼却することで経済均衡が維持される。 VanEckのプラナヴ氏は、DePINプロジェクトの成功の可能性を2つに分けて考えている。1つ目は「開発すればユーザーはやって来る」というアプローチをとるプロジェクトだ。これらのプロジェクトは、トークンのインセンティブによってネットワークの供給側をスケーリングさせる必要があり、トークン供給量は膨らむ。 「サービスの供給が臨界点に達した場合にのみ、需要側に対応することができる。こうしたプロジェクトは投機的な傾向が強く、多くの場合、需要が存在しないため、ユーザーを見つけるのが難しい」とプラナヴ氏は語った。 プラナヴ氏は、このようなDePINプロジェクトが長期的に成功するとは思えないと述べた。なぜなら、需要(トークンのバーン)が不明確であり、トークンの供給スケジュールがいつまでも膨れ上がってしまうからだ。 可能性のあるプロジェクトとは、基礎となるサービスに対する需要が明確に特定できるもの、つまり顧客がすでに存在しているものとプラナヴ氏は述べた。同氏によれば、この種のプロトコルの最終的なゴールは、ユーザーが実際に暗号資産プロダクトとやりとりしていることに気づかずにパブリックブロックチェーンを利用することだ。 「このアプローチにより、DePINプロジェクトは中央集権型のレガシーな競合に対して経済的なモート(堀)を築くことができる」とプラナヴ氏は述べた。 「このようなプロジェクトは、トークンのライフサイクルのかなり早い段階で、トークンの需要と供給のバランスを取ることができるため、成功する可能性が高くなると考えている」 |翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:Greg Rosenke/Unsplash(CoinDeskが加工)|原文:'DePIN' Is Venture Capitalists' Latest Crypto Obsession. Can It Match the Hype?
CoinDesk Japan 編集部