NSXの祖? ホンダ初のコンセプトカー「HP-X」誕生40周年を記念し、往年の栄光を再び
HP-Xは1984年のトリノ・モーターショーで初お目見えし、ホンダのミドシップ・スーパーカー開発への意欲を世界に示した。「HP」は「Honda Pininfarina」を「X」は「eXperimental(実験的)」を意味していた。ピニンファリーナが手掛けたウェッジシェイプと戦闘機を思わせるコクピットは、後のNSXのデザインに引き継がれている。ちなみにNSXは「New」、「Sportscar」、「eXperimantal」の略だった。 【画像】40年の時を経て蘇ったホンダ「HP-X」。1984年当時のトリノ・ショーの写真やレストア工程の様子も!(写真36枚) HP-Xは、ホンダの卓越したパフォーマンスの血統を体現していた。レーシングバイクメーカーとしての経験は、必然的に四輪レースの世界へと拡大していった。1962年に自動車生産を始めたホンダは、1964年には初のF1マシンを投入。1966年にはF2エンジンで成功を収める。 1980年、欧州F2に復帰し、新開発の2リッター V6DOHCエンジンを搭載したラルト ホンダは1981年、1983年、そして最終年となる1984年にチャンピオンを獲得。このエンジンがHP-Xのベースとなった。 ボディには最先端のハニカム構造、カーボンファイバー、ケブラーが惜しみなく用いられ、フロントウィンドウから透明なパースペックス製ルーフへと続くウェッジシェイプの傑作が誕生した。HP-Xは“通常”のドアではなく、戦闘機のようなキャノピー式開閉機構を搭載していた。ピニンファリーナお得意のギミックだが、高速域では空力ブレーキとして機能するという実用性も兼ね備えていた。 インテリアはコンセプトカーらしく近未来感が漂っていたが、後のホンダ車に影響を与えた痕跡が見て取れる。技術の粋を集めたHP-Xには、ホンダ独自の「電子運転支援システム」が搭載され、リアルタイムテレメトリー、GPS、さらには路面状況警告機能までもが織り込まれていた。 空力性能を追求したボディデザインは一目瞭然だが、見えないアンダーボディにも同様のアプローチが適用された。当時F1では禁止されていた「グラウンドエフェクト」の利点を活かすべく、特別に設計されていたのだ。HP-Xは単なるショーカーではなく、実働するプロトタイプとして製作され1984年に開発が始まったホンダの威信をかけたスポーツカー「NS-X」の開発に重要な役割を果たしたと言われている。 そんなHP-Xが8月18日に開催される第73回ペブルビーチ・コンクール・デレガンスにて「ウェッジシェイプ・コンセプトカー&プロトタイプクラス」に出展される。日本車としては実に50年以上ぶりのエントリーである。 ピニンファリーナによってデザイン、製作、そしてフルレストアが施された、というヒストリーはかなりユニーク。 気になる点もある。40年間、HP-Xはどこで眠っていたのだろうか。一般的にコンセプトカーは資産計上を避けるため廃棄されがちだが… 文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)
古賀貴司 (自動車王国)