原発のごみ、日本に埋める場所ありますか? 1.なぜ地下に埋めるのか?
で、そういう中で、地球科学的な取り組みについては、ちょっと英語ですいませんけど、お見せしたかったのは、この「The geology of nuclear waste disposal」。これ、geologyっていうのは地質っていう意味です。nuclearっていうのは放射性廃棄物、の処分っていう意味ですね。これは『Nature』っていう雑誌に1984年、もうだいぶ前ですが、もう30年も前ですね。そのときにいろいろな国際的な地球科学的研究者が集まって議論したのは、海溝、いわゆるプレートが沈み込む海溝に処分すれば、そのまま海溝の、プレートの中に乗っていって、地球の内部に運び込まれるだろうという、そういうアイデアを出したことがあります。 これは、ある意味では非常に地球科学的には真剣に考えていて、一番地球上で安心で、長期に関してもいい方法っていう、当時考えられたわけなんですけど、現在は海溝から、皆さんもまた聞いているかもしれませんが、いろいろな生命体、生命っていうか、生物新種、あるいはさっき出た資源に相当するようなものも出てきているっていうようなこともありで、その辺の有用性とかも考えると、なかなか難しいものもありますし、またここに処分したことを確認する、安全性とかいう意味で確認するって、なかなか難しいものもありで、で、また先ほどの、海溝っていうとだいたい、いわゆる経済海里とか、そういう200海里とかの制限もあり、そういう意味ではなかなか難しいものがあると。 ただ、その中で彼らがもう少し言っているのは、ちょっとここにも「Natural Analogies」って言っていますけど、自然の現象にもっと学ぶべきでしょうと。で、その自然の考え方、そういったものをもう少し地層処分にも応用させるべきではないかということを、きちっと言っています。
で、実は、もともと地層処分っていうもの自体が自然から学んだ方法であるということなんですね。どうしてかっていうとここにありますけど、天然原子炉というのがあります。これは天然の環境下で原子炉反応、つまり臨界反応が起こったということなんですね。 それはどこなのかっていうと、アフリカのガボン共和国にあるウラン鉱床の中、ウラン鉱山の中で発見されたんですけど、どういうことかっていうと、ここに黒い焼け跡のようなものがあります。これは今は地表に出ていますが、ウラン鉱山として開発される前は、地下400メートルぐらいのところに位置していました。で、ここのところにあったウラン鉱床、ウランの濃集部分のところが、今から20億年前に実際の現在の原子炉と同じ核分裂反応を天然の状態で起こしていたんですね。 それを1970年代に、このウラン鉱山とか、そういったものを研究してた国際原子力機関が見つけまして、で、これはここにもしそういう原子炉反応があった場合に、ここから漏れ出た、あるいはここで精製された核分裂、先ほど言っていた放射性廃棄物に相当する元素が、もしここに残っているんであれば、20億年間ずっとここに閉じ込められたっていうことになりますので、もしそういう、ここではガラス固化体もベントライトも何もないですね。ただ、それが残っているっていうんであれば、まさに天然が行った地層処分現象に近いよねっていうことで、天然の類似現象っていうことで「ナチュラル・アナログ」っていう言葉が使われているということです。 これがじゃあ、なんで、天然原子炉っていうか、そういう反応が起こったかっていうふうに分かったかっていうと、ここから実はプルトニウムが見つかったんですね。現在プルトニウムは原子炉の中でしかできません。それはどうしてかっていうと、簡単に言いますが、ウランっていうのは235っていうのと238っていう、この2つの同位体っていう元素の違うものがあります。核分裂に使われるものはこの235っていうものです。これが分裂すると中性子が出て、これがこっちに吸収されます。吸収されるとこれはウランの239ですが、1個足しますので。 で、239っていうのは、これはウランではなくて、これがプルトニウムになるということです。これは今の原子炉の、原子力発電所の中の反応としてわれわれが活用しているものですが、それが実際20億年も前の地下環境で行われたということですね。で、ここで実際プルトニウムも見つかっているし、ほかの、これが、ウラン235が分裂したあとにできたものも、一応ここで確認されているということで、これが天然の類似現象だということですね。それに学んで実際の地層処分というのも可能ではないかということで、1970年代から地下処分っていうものを本気で考え始めたということです。