掛布が語る2013年の野球界10大ニュース
2013年の野球界を振り返ったとき、私は、“個の野球”というものが、久しぶりに注目を浴びたシーズンだと思った。 4番打者へのバントサインも厭わない巨人の野球に代表されるようにチームプレー最優先の傾向となっている野球界において、楽手の田中将大投手が、24勝1Sという過去、誰も成し遂げられなかった前人未到の大記録を作り、ヤクルトのバレンティンが、タブー視されていた王貞治氏、ローズ、カブレラの持っていたシーズン55本の最多本塁打記録を大幅に更新して60本塁打を放った。個の野球を堪能させてもらえるシーズンとなった。だが、個の野球と組織の野球は、どこかでつながりどこかで矛盾する。 ■楽天優勝、マー君24連勝、バレンティン60発 マー君が一人で作った貯金24は、楽天の球団創設初となる優勝、日本一へとつながった。一方のバレンティンは、60本塁打を打ったが、チームは最下位。対照的な結果だ。野球は、たった一人の強打者がいても勝てない、勝つためには、ピッチャーが中心でなければならないというペナントレースの原則を改めて思い知らされる形にもなった。楽天の優勝は、ジョーンズ、マギーという新外国人選手2人が、一発の怖さ を見せながらボールをしっかりと見極め打線の軸になったからこそ、銀次らの若手の左打者が揃って活躍した。交流戦で、我が阪神は、マー君に土を付けかけたが、抑えの久保が、その楽天打線につかまった。 ■統一球の秘密裏の変更 非公開で実施されていた統一球の変更問題には野球人として怒りがこみ上げた。そもそも、統一球とは、どういうコンセプトで生まれたものだろう。飛ぶボールに変わることに異論はないが、その変更を黙っていたことが問題である。おそらく、あのまま飛ばないボールのままでも各打者は創意工夫をして対応しただろうが、統一球によって数字が下がり、給料の下がった選手がいることをボールのスペックを管轄していたコミッションは知っているのだろうか。プロは1球1打に生活がかかっているのだ。野球というスポーツの道具において一番大切なボールに関する情報は、すべて公開されておくべきである。