掛布が語る2013年の野球界10大ニュース
■ベスト4に終ったWBC 春のWBCにおけるV逸も忘れてならないニュースだろう。プエルトリコに敗れた準決勝は、ダブルスチールの失敗が象徴的なシーンだった。1-3で迎えた8回一死一、二塁。一塁ランナーはソフトバンクの内川、二塁ランナーは、当時中日の井端、打者は4番の巨人、阿部。あそこは走る場面でもないし、もし報道のように「行けたら行け」のグリーンライトのサインだったとすれば、いくら超一流のプレーヤーが集まった軍団とは言えど、その選手任せの采配は間違っていたと思う。もし100歩譲ってやるにしても、ベンチが全面に出て指示しなければならなかっただろう。阿部のチームとしてWBCに乗り込んだのならば、首脳陣は、腕を組んだまま阿部と心中しても良かったのではないか。 ■プロとアマの距離が接近 また高校野球の指導資格復帰のルールが変わったこともプロアマの壁を氷解する大きなニュースだろう。これまでは教員免許にプラスして2年間の教論経験が必要で、元プロが高校野球の指導者になるには高いハードルがあった。だが、講習会の受講のみで指導可能になったことは、プロの技術を幅広く高校生へ伝えるためには大改革になったと思う。その効果が生まれるのは、何年か先になるかもしれないが、間違いなく野球界の底上げにつながるだろう。 ■”赤ヘル旋風”ふたたび 10大ニュースの最後には、広島の16年ぶりとなるCS出場で、甲子園球場の三塁側とレフトスタンドが真っ赤に染まった現象を書いておきたい。ここ何年かは甲子園球場の8割近くは阪神ファンで埋まり、対戦相手のファンが左半分を占めるという光景は消えてしまっていた。1985年の優勝以前の阪神―巨人、対広島で言えば、赤ヘルブームの頃まで遡らねば記憶にない。16年間、Bクラスに低迷していた広島ファンの期待と希望。「絶対に負けられない」という思いがスタンドを埋めたのだろう。阪神は、その気迫に押されるようにして敗れたが、野球の持っている底力を見せられたような光景だった。 藤浪以外、10大ニュースに阪神の話題を持ってこれなかったことは残念で仕方がない。来年の今頃は、阪神の明るい話題が10大ニュースのトップに持ってこれるようになればと願っている。