「特殊詐欺増加」と関連?「ホームレス減少」の裏で広がる格差と不安【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
東京都のホームレス数は過去最低を記録するなど、路上生活者は減少傾向にあります。しかしその一方で、特殊詐欺犯罪に手を染める若者など、新たな形で困窮する人々が増加しているという現実があるようです。本稿では景気の予告信号灯として、東京都福祉局「路上生活者概数調査」や警察庁「犯罪統計」などの複数データを取り上げます。エコノミスト・宅森昭吉氏の解説をみていきましょう。 【早見表】毎月1万円を積み立て「預金」と「NISA」を比較…5年~40年でどれくらい差がつくか
東京23区の国管理河川を除くホームレス数、ピークの約17分の1まで低下
東京23区のホームレス調査である23年8月「路上生活者概数調査」が11月29日に公表されました。東京都福祉局(2023年6月までは福祉保健局)によるこの目視の調査は、年に2回、冬期・1月(07年までは2月)と夏期・8月に行われています。 24年8月時点での東京都のホームレスは588人でした。このうち、都・区市町村等の調査による人数は359人(23区342人、市町村17人)、国土交通省の調査による国管理河川の人数は229人(23区196人、市町村33人)。令和6年1月の調査結果と比べると、合計で36人の減少となりました。 東京23区の国管理河川(国土交通省調査)を除くホームレスのデータで長期的な推移をみると、バブル景気崩壊により最初の調査である95年から過去最高の99年8月の5,798人まで増加しました。その後04年8月まで5,000人台の高水準で推移したあとで減少に転じ、24年1月は372人、24年8月は342人と調査開始以降で最低に。ピークの約17分の1まで低下してきました。 東京都によると、都と23区が共同で取り組んできた、ホームレスおよびホームレスとなるおそれのある人を一時的に保護し、就労による自立と早期の社会復帰に向けた支援を行う自立支援センターの運営などの対策が、ホームレスの減少に寄与しているものと考えられるということです。ホームレス減少の根底には、かつて5%台の高水準だった完全失業率が、現在2%台半ばまで低下していることに表れている雇用環境の改善が、ホームレスの減少につながっていると思われます。