「特殊詐欺増加」と関連?「ホームレス減少」の裏で広がる格差と不安【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
自殺者数が減少傾向…初の2万人割れの可能性
自殺者数が減少傾向にあることも、雇用関連の明るい材料として挙げられます。警察庁のデータによると、10月速報値時点の自殺者数は前年同月比▲18.9%の1,515人と12ヵ月連続の減少で推移しています。24年では自殺者数が前年同月比で増えた月はありません。自殺者数が初めて年間3万人を超えた1998年は、金融危機に伴い日本経済が深刻な状況になった年でした。 その後2012年以降は2万人台に低下しても、近年までテレビに出てくる評論家には、「失業者は3万人」と発言する人もいました。それが初めて警察庁のデータで2万人を割り込むということになれば、経済的な理由で自殺者が増加するという悲観的な流れが一服したことを象徴する数字になるのではないでしょうか。 24年1~10月の累計自殺者数は速報時点で前年比▲9.0%の1万6,990人となっています。残り11~12月が前年比▲5.0%の3,009人で推移すれば、年間2万人を下回ることになります。ただ、自殺者数は発表ごとに24年の過去における月の数字が若干増えてしまうため、際どい状況ではあります。年間の自殺者数が2万人を下回れば、明るい話題として取り上げられる可能性が期待されるところです。78年以降データがある自殺者数(警察庁)と完全失業率との相関係数は0.911と高いため、24年に自殺者数が2万人割れすることは、雇用面の改善を意味すると思われます。
8月から3ヵ月連続2.4%台…完全失業率は安定的に推移
10月の完全失業率は2.5%で9月の2.4%から0.1ポイント悪化したと発表されました。通常、完全失業率は小数点第1位までで示されます。しかし、小数点第42位まででみると、印象が変わるのです。10月の完全失業率は2.45%で9月の2.41%から0.04ポイント上昇しましたが、8月の2.46%から3ヵ月連続2.4%台で安定的に推移しています。1~10月の平均は2.54%で、11・12月次第では、24年は23年の2.6%を0.1ポイント下回る2.5%になる可能性があります。 生活環境の厳しさを示すデータか…闇バイトが関わる刑法犯犯罪・金融機関の店舗強盗の増加 その一方で気になることは、特殊詐欺に関連した犯罪が多く報じられているように、警察庁の「特殊詐欺の認知・検挙状況等について」によると、24年1~10月の特殊詐欺認知件数は前年同期比+1.7%の増加し1万4,254件、7~9月は3ヵ月連続で前年同期比増加していることです。1~10月の実質的な被害総額は411億2,000万円、前年同期比+32.4%と増加しています。 特殊詐欺に加担してしまう要因はさまざまありますが、物価高で生活が厳しいことが要因の一つになっているのかもしれません。過度な借り入れから消費者を守る必要があるため、貸金業法では個人に対して年収の3分の1を超える貸付を原則禁止するルールがあります。年収が低い若い人で急なお金の工面が生じた場合、家族や友人に頼れず、借り入れも難しい場合に、高額な求人募集を探し、結果的に犯罪行為に巻き込まれてしまう状況もあるようです。 警察庁の犯罪統計によると、刑法犯総件数(認知件数)が増加傾向にあります。24年1~10月は前年同期比+5.2%の増加で61万5,000件、3年連続の増加ペースを辿っています。10月は前年比+3.3%と7ヵ月連続で増加中です。 また、犯罪関連では、金融機関の店舗強盗事件の発生も懸念材料です。日本防災通信協会の防災通信によると、24年9月は郵便局で3件、銀行で1件が発生し、18年3月以来6年半ぶりに月間件数が4件まで増えてしまいました。その結果、24年1~9月の累計件数は10件となり、23年の年間11件に接近。2年ぶりの増加が迫っています。2007年に年間144件発生したことに比べると、金融機関の店舗強盗は激減したままですが、特殊詐欺犯罪の増加と合わせて、生活環境の厳しさを示すデータとして気になる内容です。