「腸内細菌」と「うつ病」の意外すぎる「関係性」…患者の「腸内で減少」する「2種類の細菌」が「突破口」を暴き出す
「お腹の調子が悪くて気分が落ち込む」という経験がある人は多いのではないだろうか。これは「脳腸相関」と呼ばれるメカニズムによるものだ。腸と脳は情報のやりとりをしてお互いの機能を調整するしくみがあり、いま世界中の研究者が注目する研究対象となっている。 【画像】「日本人はアメリカ人より発症率が高い」…「大腸がん」の「驚くべき事実」 腸内環境が乱れると不眠、うつ、発達障害、認知症、糖尿病、肥満、高血圧、免疫疾患や感染症の重症化……と、全身のあらゆる不調に関わることがわかってきているという。いったいなぜか? 脳腸相関の最新研究を解説した『「腸と脳」の科学』から、その一部を紹介していこう。 *本記事は、『「腸と脳」の科学』(講談社ブルーバックス)を抜粋、編集したものです。
うつ病患者の腸で減少している2種類の細菌
うつ病とは、一言で説明することは非常に難しいですが、抑うつ気分、興味の減退、認知機能の障害ならびに睡眠障害や食欲障害などの自律神経症状を伴います。また、腸管バリア機能の低下と体内で炎症反応が起こることで産生されるC反応性タンパク質(CRP)やサイトカインが、血中で増加します。 腸内マイクロバイオータの組成にも変化が見られ、プロテオバクテリア門やアリスティペス属の細菌が増加する一方で、酪酸を産生するフィーカリバクテリウム属やコプロコッカス属の細菌が減少する、つまりディスバイオシス(腸内マイクロバイオータの組成の変化、あるいは通常は見られない菌種の異常増殖)が起こることが報告されています(※参考文献6-11)。 アイルランドのコーク大学病院において、34人のうつ病患者の糞便を回収し、その糞便を無菌ラットへ移植し、ラットの行動にどのような影響を与えるのかという実験が行われました。糞便を移植されたラットは、ラットにとって楽しい活動(例えば餌を食べるなど)をしても喜びを感じられない様子を示し(アンヘドニアと呼ばれます)、不安様行動も見られました。さらに、腸内のトリプトファン代謝物の濃度も低下しており、うつ様症状を示しました。 これらの結果から、腸内マイクロバイオータの組成が変化しディスバイオシスを起こすことで、何らかの腸内代謝物が減少、あるいは組成が変化し、それがうつ症状を引き起こしている可能性が考えられます(※参考文献6-12)。