消費税は本当に社会保障に回るのか? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
増税でどれくらい財政は潤う?
さて増税でどれぐらい潤うのでしょうか。政府などの試算だと1%分で約2.7兆円。3%で8.1兆円、5%で13.5兆円の収入になります。国と地方の取り分は8%段階で国6.3%で地方1.7%。ただ国の取り分のうち1.4%は財政が厳しい地域に配分する地方交付税分なので、実質的には国4.9%で地方3.1%となります。10%まで上げれば現在収入トップの所得税を抜いて20%近い最大財源となるでしょう。 首相が「社会保障に使う」と言明し、財務省も「消費税の福祉目的化」とうたっているので使い道を決めて集める「目的税」かどうかという議論もあります。ただ本来の目的税は「銭湯代にかかる税」のような主に地方財源で税法上あくまでも普通税。したがって「福祉に使われるならば許すか」と考えている方は今後の予算審議で本当にそうなっているのか確認する必要があります。
どれくらいが社会保障に回るのか
増税で巨額の収入が入って社会保障はウハウハになるかというと違うというのもつらいところ。たぶん今よりよくはなりません。というのも社会保障のうち最大級の年金、医療、介護などは税とは別の社会保険料でまかなう原則なのを足りないので税や赤字国債(借金)で穴埋めしてきたからです。そこを消費税に肩代わりさせると年金だけで約3兆円、他の財源不足を補うための借金約7兆円が消えていきます。5%上げて13兆5000億円を手に入れても、赤字や税の肩代わり分で10兆円が消えてしまい、純粋に福祉サービスなどに回せるのはせいぜい1%分ぐらい。その間にも社会保障費は右肩上がりに増え続け、10%が完了する2015年時点で早くも枯渇、不足しそうな状況なのです。つまり「それでも借金は増え続ける」という暗黒の結末が、残念ながら間違いなく訪れるのです。 2014年4月の3%上げを前にして「景気が腰折れする」「買い控えが起こる」と不安視する向きもあります。おそらく的中するでしょう。特に増税後の4月~6月までの四半期(3か月)間は。でも7月からは回復するという楽観論もあります。これは消費税特有の性質を前提にしていて「景気に左右されにくい」「特定層(主に働く世代)に負担が集中しない」「正確に徴収できる」など。確かに5%に引き上げた1997年以降の税収は安定しています。