ホンダの新型SUV「CR-V e:FCEV」、水素で走る燃料電池車を感じさせない普通さ。最先端と現実味のバランス
■スポーツモードの走り とくに筆者的に楽しかったのはスポーツモード。ノーマルモードなどと比べると、アクセルペダルの操作に対し、かなりダイレクトで、スポーティなパワー感を実感できた。しかも、ステアリングホイールには「メタル製減速セレクター」も装備しており、アクセルオフ時の回生ブレーキの強さを4段階で調節可能だ。コーナー手前でブレーキングに合わせて減速度を高めるなど、ガソリン車などのセミオートマ仕様的な走りを楽しむことができる。
しかも、そうした走りを味わう場合も、(海外製の某BEVのような)過度に急激な加速や、逆にパワーがついてこないといった感じはない。あくまで電動車らしいスムーズさを維持しつつ、アクセル操作に対しリニアにパワーが出る感じだ。こうした特性により、前述したとおり、普段ガソリン車やハイブリッド車に乗っているユーザーが、初めてFCEVの当モデルに乗っても、違和感はほぼないだろう。燃料が水素というだけで、乗り味などは「いつものクルマ」。まさに、今までと同じ感覚で乗れることが予想できる。
逆にいえば、パワー特性的には、FCEV特有の個性は感じない。そういった点では、ちょっと物足りなさを感じるユーザーもいるかもしれない。ただし、コーナリング時の高い安定性という面は、このモデルならではだといえるだろう。それは2トンを超える車両重量のほか、FCスタックの搭載位置を低くしたり、バッテリーをフロアに搭載したりするなどで低重心化を実施していることが要因だ。 ホンダの開発者によれば、このモデルでは、ほかにも重量増などに対応するため、「ベースとなったCR-Vハイブリッド車と比べ、サスペンションのセッティング変更やタイヤの空気圧アップ」なども実施。これらにより、路面の凹凸などでもあまり衝撃が車内に伝わらず、高い快適性を実現することに成功しているという。
■先進安全装備について 先進安全装備では、最新の「ホンダ センシング」を搭載し、「衝突軽減ブレーキ」「路外逸脱抑制機能」「踏み間違い衝突軽減システム」など、さまざまな運転支援システムを搭載する。 なかでも、今回の試乗でとくに役立った機能は、「渋滞追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)」だ。ACCは、設定した速度や車間距離を自動で保持し、前車を追従する機能。当モデルには、それに加え、渋滞などで前車が停止すると自車も停止し、前車が再発進すると一定の操作で追従を再開する渋滞追従機能も装備する。