藤井聡太と伊藤匠の表情が一変した“ある質問”…伊藤匠「新叡王」誕生、“テレビに映らなかった”舞台裏「すごく汗をかいていて…」
藤井聡太は長考を続けていた
約8畳と12.5畳の和室に到着すると、一瞬肌寒く感じるような少しひんやりとした空間が広がっていた。 藤井は番勝負を終えて「初めて」勝者のコメント後に話すことになる。映像ではインタビューを受ける側の表情を捉えるため、対局者の表情はなかなか画面に映らないが――伊藤の左肩越しから見える藤井の姿もまた、強く印象に残った。対局の最終盤、前髪をかき上げるなど必死に状況を打開しようとする様子は映像でもはっきりと確認できた。しかしそこから数十分後、伊藤のコメントを聞く藤井は、これまで見てきた対局後と変わらない。感情の揺れを感じさせない、もし内面にあったとしてもそれを制御している姿だった。 「これで3勝2敗となりましたが、この五番勝負、振り返られていかがだったでしょうか」 「そうですね……全体的に厳しい将棋が多かったと思うので、運が良かったかなと思っています」 このような記者と伊藤のやり取りの際には、活字にはならない数秒の沈黙が生まれる。その際に藤井は、人差し指、中指、薬指を顎に当て、小刻みに体を前後させていた。盤面を見つめ、時に上方を見るその姿は、まるで映像で目にする長考中の姿そのものだった。
藤井が笑った「ある質問」
世間では当然ながら八冠陥落という結果が騒がれる。しかし藤井聡太七冠は――その事実から超越した空間を生きているように――これまでのタイトル戦での奪取・防衛劇の直後と同様、凛とした受け答えをしていた。 2人の表情がそれぞれ動いたのは「同世代のタイトルホルダーが生まれまして、そういったライバルがいることはどう受け止められていますか?」という質問を受けた時のこと。藤井は「はい、そうですね……」と間を置きながら二度繰り返すと、少し笑みがこぼれた。 一方の伊藤はどうだったか。藤井が「この叡王戦でも、その実力を本当に感じるところがすごく多かったので」と口にした瞬間、ふと一瞬目を閉じたのが印象に残った。 ICレコーダーに残った刻まれた時間は、16分43秒。終局直後のインタビューが終わると、2人は大盤解説会場への挨拶へと向かった。
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