テレビに感じた停滞感、世の中との乖離――32歳、国山ハセンが「局アナ卒業」した理由
「いいですねえ(笑)。僕、昭和憧れ平成生まれなんですよ。だからTVに華やかなイメージはずっと抱いてきました。すでに学生の頃からテレビ離れと言われていましたけど、いやいや、ここからもう一度盛り上げるんだという志で入ってますから。ただやはり、SNSはアナウンサーにとっても大きなターニングポイントだったんじゃないでしょうか。僕たちは、少し前まではSNS禁止だったんですよ。ここ2、3年で一気に解禁されて、みんな自由にやってますけど。メディアが多彩になり、発信できる環境が増えたという意味では、テレビ局員からすると、良くも悪くも岐路ではあるかな、と思いますね」
僕は小さい船を選んでみました
国山にとって、アナウンサーという仕事はどういう位置づけなのか。 「そこは僕、あまり悲観的じゃないんです。憧れの職業に就きました。でもまた別のものに憧れたから、そっちへいきます、みたいなことって、どんどん増えていいなと思っているんですよ。アスリートにも現役の時代があれば、指導者になるとか、まったく違うことをする人もいる。そういう意味では、プロフェッショナルになるということは、別にどの職種でも同じだと思うから、そこは環境を自由に変えていいんじゃないですか。何か自身に、強みがあれば。その強みを作るという意味で、アナウンサーを目指すのは、とてもいいことと思います。アナウンサーとして、より職人気質を高め、極めるというやり方も当然素晴らしいと思いますし」 新たな挑戦ができたのも、アナウンサーを経験できたからだと国山は言う。 「アナウンサーになってよかったことは、無数にあります。なかなかできない経験がたくさんできましたし、社会人としての基礎も、アナウンサーとして培うことができた。番組、社内の環境、人にも、僕は本当に恵まれてきたと思います」 新たな職場で最初に取り上げたいテーマは、すでに決まっているという。 「僕自身が30代前半で、大企業をやめ、スタートアップ企業に行く人間なので、自分自身をモデルとして、転職、挑戦を後押しするような番組を。誰と対談するか、どんな演出をするか、もう考えただけで楽しい。伝えたいことを、ターゲットへ真っ直ぐに届けたい」 PIVOTはまだ社員20名ちょっとの、小さなスタートアップ企業だ。オフィスもヴィンテージマンションの小さな部屋。ここから変わる。変えてみせる、と国山は意気込む。 「大海原へ、小さな船で、ちょっと行ってみようかな、という気持ちです。前職では、遠くへ行くには大きな船で、という雰囲気がありましたけど、僕は小さい船を選んでみました。創業期に携われるチャンスは、なかなかありませんから」 ___ 国山ハセン(くにやま・はせん) 1991年東京都生まれ。2022年まではTBSテレビのアナウンサー。中央大学商学部卒業。『アッコにおまかせ!』『グッとラック!』などに出演。2021年の2020年東京オリンピックでは、報道系アナウンサーの一人として活躍。2021年8月より、『news23』のキャスターを担当。2023年から、ビジネス映像メディアを提供する「PIVOT」に入社。映像プロデューサー兼MCとして活動を始める。