韓国の首都圏一極集中、地方は「消滅地域」の危機に現実味 子育てなど支援充実で出生率の増加も
2014年に日本で出版され、韓国で話題となった本がある。元総務相で岩手県知事も務めた増田寛也による「地方消滅」だ。民間の研究組織「日本創成会議」での議論をもとに、東京への一極集中によって、全国の自治体のうち、約半数の896が消滅しかねないと警鐘を鳴らした。 韓国人口、半世紀後に30%減 3622万人、出生率も低下へ
韓国でも、ソウルを中心とした首都圏に人口が集中し、地方の衰退が深刻な問題になっている。首都圏の人口は韓国全体の50・5%(2022年)を占め、日本の首都圏の人口比を上回る。韓国政府は今年2月、全国228の自治体のうち、51・8%の118を「消滅危険地域」と分類する調査結果をまとめた。 地方の活性化は日韓共通の課題だが、韓国は首都圏への一極集中の度合いが日本より高く、自治体の直面する問題は、より深刻だ。一方で、教育や子育ての支援などで成果をあげている自治体もある。韓国での現状を取材した。(敬称略、共同通信=佐藤大介) ▽もがき 韓国南部の都市、釜山(プサン)市。九州に近く日本からも多くの観光客が訪れるほか、韓国最大の港湾都市としても知られる。人口は約330万人とソウルに次ぐ「韓国第2の都市」だが、人口減少に歯止めがかかっていない。 特に目立つのが若者の流出だ。釜山市によると、18~34歳の人口は15年の約74万人から、21年には約69万人にまで落ち込んだ。一方で、65歳以上の割合は約22%と、主要都市で最も高い。
日用雑貨や衣類、土産品などを扱う店が軒を連ね、観光名所として知られる国際市場。多くの人が行き交うが、通りには空き家となっている店舗も目につく。60歳代の土産店の男性店主は「コロナ禍の影響で売り上げが落ち、後継者も見つからずに店を閉めるケースが相次いでいる」と話す。 釜山の人口は、ピーク時には約390万人を有していた。だが、人口減と高齢化によって雇用が減り、若者たちはより良い働き口を求めて、首都圏を目指すという悪循環に陥っている。20年の韓国企業売上高で、上位100社に入る釜山の企業はなく、23年の入試では釜山の大学15校のうち14校が定員割れとなった。 韓国政府が分類した「消滅危険地域」には、釜山にある16の自治体(区、郡)のうち、7カ所が含まれている。韓国メディアによると「消滅危険地域」となった自治体では、バスターミナルが廃業するなどの影響が出ているという。 港湾都市として物流を支え、携わる労働者や求人数も多かったが、機械によるオートメーション化によって、雇用は減る方向にある。打開策として、釜山は30年万博を誘致しているが、その効果は未知数だ。