韓国の首都圏一極集中、地方は「消滅地域」の危機に現実味 子育てなど支援充実で出生率の増加も
首都圏に位置する仁川市に「第2の都市」を奪われることも現実味を帯びてきており、釜山のもがきが続いている。 ▽誇り 一方、独自の取り組みによって、成果を上げている地方自治体もある。 ソウルから北東に約90キロ。江原道(カンウォンド)華川郡(ファチョングン)は、南北を隔てる軍事境界線から近い場所に位置する。軍人や軍車両の姿も目につくが、一帯は山に囲まれ、自然豊かな風景が広がっていた。 華川郡の人口は約2万3800人(23年8月現在)で、前年より400人ほど増加。女性1人が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」も、22年が1・40と前年より0・2ポイント上昇した。 韓国の出生率は年々低下し、同年は0・78と過去最低を記録していただけに、郡担当者の崔秀明(チェ・スミョン)(57)は「子育てや教育環境などの整備に重点を置いてきた成果だ」とし、将来的には「3万人の人口を目指したい」と胸を張った。
華川では、最優先の政策課題として「子育てのしやすい環境づくり」を掲げ、住民に対して手厚い支援を行っている。郡内の病院に隣接する「チョリウォン」と呼ばれる韓国独自の産後ケア施設では、出産後の母子が2週間、無料で滞在することができる。 生後10日ほどの女児と施設で過ごしていた李・ミンスは「職員の数や設備が充実していて、安心して過ごせる」と笑顔を見せた。軍人である夫の転勤で3年前から華川に住んでいるが「子育ての不安が少なく、このまま住み続けてもいいと思っている」と話す。 郡内では子ども向けの図書館など学習施設が整備され、高校生を対象にした無料の「学習館」では、各科目の講師が放課後や休日の指導に当たる。華川から大学へ進学した学生には授業料を全額負担し、生活支援も行うという徹底ぶりだ。 郡トップである郡守の崔文洵(チェ・ムンスン)は「地方にいても教育で公正な機会を確保できることが、民主主義社会の発展につながる。そして、華川で生まれ育ったことを誇りに思うようになるはずだ」と、政策の意義を強調する。