韓国の首都圏一極集中、地方は「消滅地域」の危機に現実味 子育てなど支援充実で出生率の増加も
移住によって郡内の高校入学者が増えるなど、政策の効果は目に見えてきている。一方で財政的な負担は重い。「中央政府が地方自治に目を向け、支援をすることが大切だ」。崔文洵は、言葉に力を込めた。 【専門家インタビュー】林承彬 韓国・明知大教授「移民含め多様な人口構成を」 韓国で首都圏に人口の過半数が集中する理由の一つは、輸出依存型の産業構造にある。外国との貿易を迅速に行うため、企業は大規模な港や空港の近くに工場を建設する。地理的な条件から、首都のソウルとその周辺に、物流拠点と人的資源が集中することになった。 それによって生じたのが、都市と地方の所得格差だ。農業よりも会社員の所得が上であるならば、若者を中心に地方から人口が流出するのは避けられない。 ソウルでは、マンション価格が1億円を超えることは珍しくない。地方との価格差が10倍近くに達することもあり、日本での価格差よりも格段に大きい。都市の不動産価格高騰が、所得格差を固定化させることにもつながっている。
また、教育機会の格差も大きな要因だ。地方にも優秀な大学はあったが、首都圏にある大学の方が大企業への就職や各種試験の合格に有利となっている。親としてもサクセスストーリーを実現させるために、首都圏に住もうとする。そうした循環が、首都圏への人口集中を生み出した。 都市と地方の格差が拡大すれば、社会的にも政治的にも葛藤が深まる。だが、地方が所得を上げ、十分な教育の機会を確保し、企業を誘致するのは実際には困難だ。韓国の合計特殊出生率が過去最低を更新する中で、地方が人口を増やすことは一層難しい状況になっている。 それだけに、地方は移住者よりも都市から観光などで訪れる人を増やす方向で、独自の戦略を練ることが求められる。隣接する自治体との連携強化など、行政の効率化を進めて、政府からの無駄な交付金をなくしていくことが必要だ。 日本は韓国より内需が大きく、人口も首都圏に集中しすぎていないので、地方でも企業を誘致しやすい。一方、日韓で共通の問題は、地方公共施設の維持管理に金をかけすぎている点だ。箱物ではなく、地方で中小企業に就職したり、子育てをしたりする人への支援に充てるべきだろう。