大阪・新世界を駆ける元自衛官の女性人力車夫 コロナ乗り越え大きな一歩
勉強熱心で道路が狭い新世界でも安全に走行
板倉さんは研修期間を終え、10月から本格的に新世界で人力車夫としての一歩を踏み出した。 決して広いとは言えない新世界の道路で、多くの観光客や車が行き交う中、事故のないよう慎重に人力車を曳かなければならない。 しかし、國領さんは「筋がいいというか、勉強熱心でノートもしっかりとって、翌日には逆に僕たちがガイドの知識を教えてもらうこともあった。けっこう力もあるし、お客様との話もはずむんです」と、板倉さんの働きぶりに驚く。
盛り上がる新世界、即戦力の登場に上司も期待
また、最初ということで、板倉さんには新世界周辺を回る10分、20分コースを任せようと思っていたが、板倉さんは、あべのハルカスや四天王寺を巡る45分コースをやりたいと志願。客からの評判もよく、すでにリピーターも来るほどの人気ぶりだという。 國領さんは「四天王寺やハルカスを回るコースは坂や交通量が多いからベテランでも大変なんです。けど、あられちゃんは、それをこなしちゃうんですよね」と目を細める。 新型コロナウイルスの影響で、新世界の観光業などもコロナ前に戻すことが当面の目標だが、今年5月に開業した通天閣のタワースライダーが話題を呼び、利用客は累計5万人を超え現在では多い時に1時間待ちになるほどだ。 現在は全国旅行支援も始まり、國領さんにとって即戦力の板倉さんの登場は大きいという。26日には新世界の地元商店主やミュージシャンらが「新世界音楽博覧会」が行われ、板倉さんは國領さんとともにスタッフとして参加するなど、新世界に多くの観光客が戻りつつある。
新世界のニューヒロイン「車夫は天職」
さて、当の板倉さんは「最初は上司の國領さんも含めて、新世界のみなさんのキャラクターに驚きましたが(笑)、今ではガイド中でもみなさんが『がんばってー』と温かい声をかけてくださるので、逆に私の力になっています」と笑顔で語る。 広告代理店で働く國領さんの妻は、板倉さんのデビューと同時に「新世界のニューヒロイン」というキャッチコピーをプレゼントし、板倉さんの名刺にもそれが刻まれた。 自衛官時代に鍛えた体力、ブライダルプランナーやホテルの女将業で培った接客などの経験は、人力車の仕事ですべて生かせるとしており「私の中で、車夫は天職と思ってます」と言い切る板倉さん。 大阪・新世界の地で大きな一歩を踏み出し、きょうも元気に駆けていることだろう。