大阪・新世界で自主清掃5年 元自衛隊員・人力車俥夫の生き方
地元商店主らも感心
きれいな「新世界」を楽しく案内していきます──。大阪市浪速区の通天閣周辺、新世界へ行ったことがある人は、丸メガネに短髪の威勢のいい人力車を曳く青年を見たことがないだろうか。この地で俥夫として働いているこの青年が、就業前に自主的な清掃活動を5年間も続けている。この姿に、地元商店主らも「これはなかなかできることではない」「彼のおかげで路上のゴミも減ってイメージも良くなっている」と感謝の声があがっている。 【動画と拡大写真】新世界「人力車の翔ちゃん」ディープな大阪を案内したい
愛称は「翔ちゃん」元は自衛隊員
大阪の有名な観光地のひとつである新世界を人力車で観光案内する「俥天力(しゃてんりき)」を営む、俥夫の國領翔太さん(31)は、2012年からここ新世界で人力車を曳き、地元では「翔ちゃん」の愛称で親しまれている。 ひとたびカメラを向ければ、必ずといっていいほど元気なポーズをとったり、周囲を笑わすトークを放っているが、新世界に来て5年間、毎朝自主的に続けているのが新世界での清掃活動だ。 「初めて新世界で人力車を曳くことになった時、朝とか道路にゴミが落ちていて驚いたんです」と5年間の様子を振り返る翔ちゃん。 実は翔ちゃん、前職は自衛隊に所属。高校卒業後の2004年に入隊し、タンプ車両中隊などにも配属され、2006年に任期満了で退職。その後、高校時代、ラグビー部の練習中に嵐山で見かけた人力車と俥夫の姿にあこがれたことを思い出し、京都府内で俥夫の修行を積んだ後、生まれ故郷である大阪の観光地、新世界で独り立ちすることになったというたたきあげの苦労人だ。 やっとの思いで人力車を曳けるようになった場所。しかし「ゴミが散らかる道路を人力車で走ってお客さんが喜ぶのか?」と疑問を持ったわけだ。そこで、まだ人の少ない早朝などに、ゴミ袋を片手に清掃を行い、お客さんに気持ちよく見学してもらおうと考え、実行に移したという。 しかし、新世界周辺といっても、北は浪速警察前から南はジャンジャン横丁に近い地下鉄動物園前駅など、半径1キロほどはある。雨の日は休業となる時も多いが、それ以外は毎朝欠かさず清掃。当初はゴミ袋が何袋あっても足らないくらいの状況だったという。