大阪・新世界を駆ける元自衛官の女性人力車夫 コロナ乗り越え大きな一歩
しかし、そこで思いがけない事態が。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、結婚式場の経営が大打撃を受けた。 「コロナの影響で全員解雇という形になり、辞めざるを得ませんでした」と板倉さん。やりがいを感じていた仕事だっただけにショックは大きかったという。
伊豆のホテルのホール係から若女将に大抜擢
次に見つけた職業は静岡県伊豆市のホテルでの和食のホール担当。ホテル敷地内の離れで和食を提供する形で、犬などのペット連れでも利用できるスポットだった。 板倉さんは、かつてドッグトレーナー科で学んだ経験を活かし接客でも活躍。そんな時、同ホテルの若女将が退職したため、その後任に大抜擢された。 「これは私の希望ではなく、責任者の方が退職されたのでホテル内の会議で決まりました。いきなり責任者として経営にかかわったりして大変でした」と板倉さんは当時の大変な日々を振り返る。結局、女将としては約半年間の勤務で退職となった。
たまたま見た求人情報誌で人力車夫へ
静岡のホテルを退職した後の今秋、尼崎市に戻り求人情報誌を手にしたところ、大阪・新世界で人力車夫募集の内容を見つけた。 板倉さんは、その求人誌の内容をみた時、小さい時に京都・嵐山で乗った人力車での楽しかった思い出がよみがえったという。
師匠も元自衛官ですぐに打ち解けた
「自分の中でちょっと違った接客業がしたいなあと思った時に車夫の募集を見つけました。あと、たまたまその時にテレビで女性人力車夫の特集をやっていたのを見て、それも決め手の一つになりました」(板倉さん) 大阪へ面接に行くと、出迎えてくれたのは新世界人力車「俥天力(しゃてんりき)」の車夫、國領翔太さん(36)だった。 大きな丸めがねをかけ「まいどー」と元気に接してくれた國領さんに最初は驚いたが、話をすると國領さんの前職が自衛官だったことで、すぐに打ち解けた。
新世界の人力車経営、コロナでピンチも関西大御所のテレビ出演で求人募集
國領さんは「自分のような自衛官出身の方が来てくれたらなあとか思って募集を出したら板倉さんが来てくれたんです。面接の途中で採用は決まりましたね」と、その時の様子をうれしそうに語る。 國領さんが経営する俥天力も、新型コロナウイルスの影響を受けこの2年間は売上が激減。國領さん自身も車夫だけでは生活が成り立たず、人力車の営業を土・日曜のみとし、平日は警備員のアルバイトをしながら奮闘する日々を送っていた。 ただ、今年の夏にNHK大阪で放送されたテレビ番組「アッコと恵美子」で、タレントの上沼恵美子さんと和田アキ子さんが、なんばから新世界へ移動する際に、國領さんの人力車に乗車する様子が放映され、大きな反響を呼んだ。 それを受け、國領さんは放映後の今年8月から平日の人力車の営業を復活。人手も必要となり求人誌に募集をかけた2日後に板倉さんから応募があったという。