「今考えているかどうかだけに焦点を当てて授業をする」…神奈川御三家の元・教師が不登校の子に「学び場」をつくった真因
小中学校における不登校が全国的に増える中、不登校の子が安心安全に過ごすことができる居場所づくりが急務となっている。文科省もカリキュラムなどで柔軟な対応を認める「学びの多様化学校」(不登校特例校)や、空き教室を使用する「校内教育支援センター」の拡大で支援を強化しているが、民間でも支援の輪が広がりつつある。そんな中、「居場所も大切ですが、学びの機会の確保も必要ではないか」と考え、不登校の子に学び場をつくった教師がいる。神奈川県の進学校、栄光学園の元・数学教師、井本陽久さんに教育ジャーナリストの中曽根陽子氏が話を聞いた。 【写真を見る】小学校低学年の思考力教室。できる・できない、理解している・していないではなく、今考えているかどうかだけに焦点を当てて授業をしている 全国で30万人近い小中学生が不登校になっており、フリースクールなど子どもたちの居場所づくりが課題になっています。もちろん居場所も大切ですが、学びの機会の確保も必要ではないか。 そんな課題を感じている中で、単なる居場所ではなく、しかも子どもたちが夢中になって学べる場所がある。しかも学校と併用しているケースもあると聞き、行ってきました。 今回取材した「いもいも」の共同代表・井本陽久さん(通称いもにい)は、神奈川県にある進学校の栄光学園中学高等学校で数学教師として、20年以上前から独自の幾何教授法や、思考力を重視する授業を実施。アクティブラーニング型授業の先駆者として全国から教育者が視察に訪れ、それがNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』にも取り上げられた経歴の持ち主です。 その傍ら2017年から思考力教室「いもいも」を主催。2019年からは「いもいも」での活動に軸足を移すために栄光学園の非常勤講師となり、今年4月から「いもいも」に専念しています。 とはいえ、「こんな教育をしたい! という思いを持って立ち上げた訳ではなく、その時々にいろいろな方が手を差し伸べてくださり、導かれてきて今がある。でもだからこそ、嘘くさいことはしない。何をせよということなのかは常に考えている」と言います。そんな井本先生が作ったいもいもとはどんな場所なのでしょう。 「いもいも」についてこのような記載があります。「学校の成績を上げることや受験での成功を目的に、ただ正解を探す勉強をするのではなく、赤ん坊が、この世に生まれ落ちた瞬間から、好奇心いっぱいに、喜びに満ちあふれたまま、まなび、考え、体を動かし、試行錯誤をし続けるように、本当に安心できる空間の中で、自分をよりどころに存分に考え、まなびを深めていく場……」(いもいもnoteより) 現在、「いもいも」には、小学校低学年から高校生までを対象とした夕方からのアフタースクールのほかに、小中学生を対象とした「いもいもデイクラス」も開講しています。 デイクラスは、不登校を選択して毎日フリースクールのように通う子もいますが、学校に行きながら、週に1~3日通ってくる子どもたちもいます。 今回は、夕方からのアフタースクールのうち、小学校低学年の思考力教室を見学し、井本先生に話を聞きました。