月保険、宇宙エレベーター建設構想 裾野広がる宇宙関連産業、巨大市場に大手企業続々
北海道の宇宙産業振興を側面支援する北海道経済部の担当者は、今回の宇宙サミットを振り返り「道内で宇宙関連に携わるスタートアップ(新興企業)などを見ていると、『ものづくり』から『売る』ステージへと変わってきている印象がある」と指摘する。
前回までの宇宙サミットは関心を喚起するためのイベント的な色合いが強かったが、今年はロケット打ち上げ場などがある大樹町の北海道スペースポート(HOSPO)を中心とした関連企業の集積や技術力の向上などを背景に、実用化が射程圏内に入ったことを印象付けた。同経済部担当者は「企業や団体が本格的な〝仕込み〟に入り、業界全体の熱量も上がっている。この動きに歩調を合わせるように宇宙産業への関心が高まり、進出を検討する企業が増えているのではないか」と分析する。
ロケットの小型化技術が進むことで研究開発費や製造コストが低減され、新規参入の垣根が低くなる。それによって間接的にかかわる分野も増えるとみており、「今後も企業活動の支援を主軸とした産業振興を進めたい」と意気込む。
■データ活用分野に注目
今回のサミットでは、三井物産の担当者が北海道の宇宙事業に伴う国内の経済波及効果はロケット製造、衛星の運搬などによって2033年までの10年間に約3865億円に上るとの試算を示した。事業の進展によって関連産業はどのような裾野の広がりを見せていくのか。企業の新規参入支援などに取り組む北海道経済産業局の担当者は「打ち上げた衛星のデータをどう利活用していくかが一つのポイントになる」と強調する。
可能性のある活用例として、自然災害時に地形データを活用した被害規模の把握▽鉄道の線路変形の早期発見▽ヒグマ出没の早期検知―などを挙げ、これらのデータを分析できる企業進出などが期待できるという。
外国人技術者や海外からの観光客の受け入れ態勢を整える中で「住環境だったり、帯同する家族のためのサポートだったり、宇宙とは直接関連しない分野での広がりも考えられる。今はまだ想像できない領域もあるはずで、今後が楽しみ」と期待を込めた。(坂本隆浩)