「多重下請け」によるしわ寄せをどう改善する?――2024年問題を前に上がる中小物流企業の悲鳴 #令和の人権
トラックドライバーの労働時間を延ばす「荷待ち問題」
トラックドライバーの労働時間のなかで、運転、積み下ろしなどの付帯作業に並んで多いのが「荷待ち」と呼ばれる時間だ。 荷物を時間通りにクライアントや物流施設へ届けても、荷主側の都合により積み下ろしや倉庫・店舗への運び込みができず、待機させられることは多い。橋本さんによれば、2~3時間待機することもあるという。 「荷主とトラックドライバーには上下関係が生まれてしまっていて、トラックドライバー側から改善を求めることは難しいんです。それが二次請け、三次請けの中小企業であればなおさら。この荷待ちの時間も残業時間に換算されるので、残業時間の規制が始まれば、受けられる仕事の数も減ってしまう」 この荷待ちが、トラックドライバーの労働環境をさらに過酷なものにしていると橋本さんは話す。 「環境問題を理由に、荷主側から待機中のアイドリングストップを要請されることもあります。過去には夏場に冷房をつけることもできず、炎天下で体調を崩して亡くなってしまったトラックドライバーさんもいました。環境のためと言いながら、実際のところは届け先の近隣住民の顔色をうかがって、音を出さないようにアイドリングストップをさせている側面もある」 環境への配慮を謳いながら、トラックドライバーの人権が軽視されているのが現状だ。
消費者からのクレームと、疲弊するトラックドライバーたち
橋本さんは、消費者の意識も変わる必要があると語る。 「あるとき、SNSで『段ボールに傷がついている』と怒る投稿をした消費者さんがいて、話題になりました。実際にそうした声はよく届くそうですが、私は違和感を抱いていて。本来、段ボールは商品を守るための包装材であるはずなのに、『段ボールも商品のうち』とされる空気がある。包装材に傷がついて『弁償だ』という理屈になることも、『弁償の責任がトラックドライバーにあるのではないか?』とされる風潮も恐ろしい」 さらに、橋本さんは現場のトラックドライバーたちへの心配を口にする。 「もちろん、荷物を乱暴に扱う配達員がいないわけではないでしょう。ただ、世の中がトラックドライバーに責任を負わせすぎている、と感じます。消費者のサービスに対する要求が高すぎて、現場が疲弊してしまうのではないかと」