「こんな終わり方あるのか」競輪記者が見た新旧S班“天国と地獄”の舞台裏/KEIRINグランプリ2024
2024年はほぼ「地獄ロード」を走っていた新山
松本 そして新山響平。 前田 この話題のテーマが「天国と地獄」だけど、新山は9月末の青森記念ぐらいまで地獄ロードでしたよね。すっと頑張り続けて、レース内容もいいのに。 松井 年頭って、普通だったらオフを作らなきゃいけないと思うんだよね。野球選手みたいに、シーズンが終わったら。新山はそれがないまま行くから。やっぱりいつも前半は良くない。スロースターターだよね。 松本 新山、結局今年いくつGI決勝に乗りました? 4つですよね。 前田 「逃げ切れるんじゃないか、優勝できるんじゃないか」と思うレースもあった。いいところがピョンピョンってあるんだけど、それらは全部「天国に届きません状態」。青森で眞杉にいじめられて、序盤は北井に散々いじめられて。 松井 新山は自分自身を分析して「自分はゴール前までボールを運べるけど、ゴールに押し込めない」って。ボールをゴールに押し込むためにどうしたらいいのか、ずっと模索していたよね。 松本 ラインがあってこその新山なんですけど、グランプリは単騎が濃厚ということで。天国モードに入るのか、もしかしたら地獄編になっちゃうのか。どうなんだろう。 松井 でもやっぱり、みんなどこかで「新山はグランプリに乗って欲しいな」って思っていたよね。 松本 四日市記念の中野慎詞のレースっぷり。救世主・中野が現れて...。あの四日市記念は大きかったんじゃないかな。 松井 あの優勝で賞金はワッキーを抜いたんだもんね。 前田 あれでだいぶ有利になった。
「怪物ルーキー」だった岩本は40歳でS班に
松本 さあ、そして初のS級S班、岩本俊介。 松井 ダービー準優勝だからね。ただ、彼も地獄を見たよね。 前田 驚いてはいけない人のはずなんです。もっと早くGI優勝していてもいい。デビュー時から期待されてきて、記念の優勝はポツポツできるようになって、GIIの決勝に乗ったりしたけど、やっと今年GIの決勝に乗った。ちょっと時間がかかりましたね。 松本 94期の岩本とは、ちょうど自分の記者としてのデビューと被るんです。岩本のデビュー戦は千葉で、引退する滝澤正光さんと入れ違いだったんですよね。滝澤さんも同じ開催のA級戦に入っていて。 前田 滝澤二世じゃないけど、デビューした時は「怪物」という表現で我々は書いてきた。 松本 デビューからずっと見てきた選手なので、「岩本がついにグランプリに出るところまで来たか」と。今年のダービーで初めてGI決勝に乗ったというのも驚きなんだけどね。 前田 「本当に岩本はGI決勝に乗れないのか? ここで終わっては困る」という存在でした。 松井 「ダービーの決勝2着は絶対グランプリに乗れる」っていうジンクスがある。ただ全体的に賞金が上がっていて、他のGIは2着でもまあまあ賞金があるから。後半戦の岩本はバタバタだったし...。競輪祭には深谷がいて、松浦も慎太郎もいて「これはちょっと厳しいわ、誰かに抜かれちゃうんじゃないか」ぐらいに思っていたんじゃないかな。 松本 競輪祭の決勝はドラマでしたよね。岩本にとっては、同期の脇本が勝つしかない。松浦が2着だったら自分はダメという状況。結局脇本が勝って、犬伏と松浦の2、3着だったわけじゃないですか。それで岩本がグランプリに滑り込めた。やっぱり彼も「持っている人」でしたね。 松井 競輪祭では、和田健太郎がガチガチの岩本をほぐしてやろうと、共同会見とか記者がいるところに常にくっついて和ませていたでしょう。あれには愛を感じた。 前田 和田健太郎が女房役をしていましたね。彼もギリギリでグランプリに乗った経験をしてるから。