「こんな終わり方あるのか」競輪記者が見た新旧S班“天国と地獄”の舞台裏/KEIRINグランプリ2024
死闘制した北井、充実極まる古性、「やっぱり強い」脇本
松本 続いてグランプリ初出場の北井佑季。「本当にこんなに練習するのか」って言うくらい練習の鬼だって、いろんな人から聞きますよね。 松井 川崎記念のエピソードはすごいよね。準決勝で眞杉とバチバチやったけど、先行させてもらえず負けて。悔しくてレース後に検車場からいなくなっちゃった。どうしてたかっていうと、3階のトレーニングルームで倒れるほどワットバイクでモガいてたって。「北井、大丈夫か」って同県のみんなも心配して、なんかもう劇画みたいな話だよね。 松本 とことんストイックというか、負けん気が強いというか。それが北井の原動力なんでしょうね。 前田 北井は、今年は種を蒔く時期かなと思ったけど一気に来ましたね。神奈川の、南関の流れに乗って、GIまで獲った。高松宮記念杯決勝は、古性に突っ込まれてコケながら制して...壮絶っぷりも北井らしくてすごい。 松井 北井の師匠の高木隆弘も平塚記念で落車滑入で優勝したレースがあって。高木さんも「あれを思い出した」と言っていた。そんなところまで似ているのか(笑)。 前田 死闘を制す力はやっぱり本物。 松本 郡司と北井の神奈川2人は、前後を入れ替えてGIを1つずつ獲った。グランプリでまた連係できる。並びも含めて楽しみですよね。 松井 去年の競輪祭では松井宏佑が獲りかけたけど逃がしてしまって。北井は今回、GIを掴めてよかった。 松本 古性はどうでしょう。夏から秋にかけての充実度はすごい。ほとんど車券にからんでいました。 松井 単騎だろうが目標がいようが、どんなときでも3着以内に入らないことはないから、敵にしたら本当に厄介な相手なんだろうな。 前田 「前の選手のこの動きがこうなる」とか、選手単体の動きを見極めている話は聞いていましたが、レース全体もここまで綿密に見えているのか、と思わされることがたびたびあります。多分9人全員のことが見えていますよね。 松井 同じようなことを、昔の松浦に感じたな。例えば「ここで自分がブロックすると、はじかれた選手はこっちの選手が邪魔になるから、自分が勝ちやすくなる」みたいな。将棋で言うと、3~4手まで先を見た動きができるというのがあった。今は古性がそうだね。 前田 極まっている感じですね…。 松本 そして最終的に競輪祭を脇本雄太が獲りました。 前田 ワッキーもね、ヒヤヒヤというか...。 松井 本当に危なかったね。 前田 ウィナーズカップ(GII)は窓場と古性の力を借りて勝てたけど、やっぱり「大ケガからもう1回GIを獲れるのか」っていうところをモノにしました。 松本 ワッキーは今年ダービーに出てないんですよね。だから一番の高額賞金レースを走れていない。ウィナーズを勝った後も体はボロボロでした。 松井 自宅にジムを作ったことが話題になってはいたけど、本人は常に何かを抱えて走ってる感じだった。 前田 4月の西武園記念初日はレース後に椅子から立てなくて。 松本 今年は確かに初戦の大宮記念を初日だけ走って欠場したり、体調が整わない1年でした。だけど最終的に競輪祭を獲って「やっぱ強いな」って。 松井 最後のひと飲み、勝利への執念というか。ワッキーはただの天才じゃなくて、ものすごい負けん気が強い。届くの!? っていうレースが何度もあったじゃん。「こりゃダメだ」と思っても最後に届く。 前田 ワッキーって大変ですよね。勝ってもあまり褒められないけど、負けた時にはすごく叩かれる。でもそれがやっぱり横綱というか、受けて立つという、立ち位置なんでしょうね。