「こんな終わり方あるのか」競輪記者が見た新旧S班“天国と地獄”の舞台裏/KEIRINグランプリ2024
競輪ファンにとって年末の風物詩である「競輪グランプリ」。今年は2021年以来の静岡競輪場を舞台に12月30日に行われる。そこでnetkeirin編集部は、スポーツ紙の敏腕記者3名を集め座談会を開催。前編は、選手を間近で取材してきた彼らが2024年のトップ戦線を総括する(文中敬称略)。(取材日:12月6日)
郡司と平原がS班返り咲き
デイリースポーツ 松本直記者(以下松本) グランプリを前に、2024年の競輪シーンを振りかえりましょう。 東京スポーツ 前田睦生記者(以下前田) 私たち記者が見たリアルな選手たちの姿もお伝えします。 日刊スポーツ 松井律記者(以下松井) グランプリ出場メンバーも去年と変わって、S班の出入りが多い1年になったね。 松本 2月の全日本選抜競輪で郡司浩平が優勝を決めて、 5月の日本選手権競輪で平原康多が優勝。S班復帰を決めたのはこの2人。6月の高松宮記念杯で北井佑季が初優勝。古性優作が夏頃からエンジンがかかってきて、最後のグランプリへの賞金争いを脇本雄太が競輪祭でひと捲りして仕留めた。ざっとこんな流れでしたね。 前田 S班に復帰した選手からいきましょう。まずは郡司浩平。去年はケガが多く、それでS級S班から陥落して。 松井 一番の落とし穴は地元の平塚ダービー落車だったよね。「もう絶対獲るぞ」というところでしくじってリズムが壊れた。だけど、深谷が来て、松井と北井が成長して...と南関が厚くなっていった流れの中でボンと岐阜の全日本選抜で花開いた感じだったよね。 松本 全日本選抜に関しては北井佑季の引っ張りが大きかったし、彼の成長が郡司には大きかったですね。 松井 北井の準決勝はすごかった。 松本 郡司は去年の競輪祭でS級S班からの陥落が決まってから、1か月休んだじゃないですか。で、年明け1月の岸和田FIから復帰して優勝。リフレッシュがうまくいったんですね。1月からもう優勝、優勝で。 前田 タテがパワーアップしている感じだったから「返り咲くんだろうな」とは思ったけど、年明け早々だったからすごいです。やっぱり郡司は持っているんだな、と。 松本 郡司がS班復帰を決めたことで、南関にとっては高松宮記念杯での北井の優勝に繋がったのかなと。 松井 そうだね。 松本 そして平原康多。 松井 平原はSSから陥落後も流れが悪くて、FIでも勝てなかった。四日市では若手の纐纈洸翔に手玉に取られるようなレースだった。「大丈夫か?」と思ったところで、まさかのダービーを。ダービーは今まで獲れてなかったでしょ。 前田 高額賞金(ダービーとオールスター、グランプリ)に縁のない男、と。 松井 ダービーに関しては、今まで平原がやってきたことが結果になったなって本当に思ったね。調子うんぬんじゃないんだって。決して下馬評は高くなかったけど、 吉田拓矢が平原のために先行して、平原の背中をずっと見てきた武藤龍生が3番手でしっかり仕事して。彼の人間力というか、そういうものが獲ったタイトルだったかな。 前田 2024年の一番いいシーンだったかもしれないです。 松井 なかなか泣かない平原が、表彰式で泣いて言葉を詰まらせていて。 松本 郡司と平原は、苦しんだ後のことだったから、やっぱりグッとくるものはあったんでしょうね。